トトオです。
メイデンレビュー第13弾です。
前回は、
ブルースとエイドリアンの復帰作でした。
今回、同じ復活ラインナップの、
第二作目のレビューです。
前回記事はこちらです。
この記事は、
以下の方にオススメです。
ヤニック・ニコの功績を知りたい
概要『Dance Of Death(死の舞踏)』(2003年発表)
2003年9月に発表された、
通算13枚目のアルバムです。
前作『ブレイヴ・ニュー・ワールド』から、
約三年経過しています。
前作でブルースと一緒にエイドリアンも復帰して、
トリプルギター編成になりましたが、
その体制での二作目になります。
ブルースとエイドリアンが復帰した前作で、
メイデンは完全復活したイメージが、
世に広まりました。
(メタルの世ですが)
この二人のメイデン復帰時は、
まだジューダス・プリーストのボーカルは、
ロブではなくティムでした。
そのため、
メタルの双璧を担う二大バンド、
メイデンとプリーストとしては、
当時、メイデンが大きく前に出た印象です。
(その後すぐロブもプリーストに戻りますが)
楽曲構成
史上初ニコのクレジット
全11曲と、前作より1曲多いです。
作曲の割合は、
エイドリアン・スティーヴ:2
ヤニック・スティーヴ:1
デイヴ・スティーヴ:1
ブルース・エイドリアン・スティーヴ:2
ブルース・ヤニック・スティーヴ:2
ブルース・デイヴ・スティーヴ:1
ブルース・エイドリアン・ニコ:1
となっています。
まず特筆すべきは、
ニコが参加している曲があることです。
ニコの名前がクレジットされるのは、
メイデンの歴史上初めてです。
それもあってか、
各メンバーの貢献度のバランスが良いです。
ブルースとエイドリアンの存在感UP
クレジット数をカウントすると、
ブルース:6
エイドリアン:5
ヤニック:3
デイヴ:2
ニコ:1
となっています。
ここに来て、
ブルースとエイドリアンの存在感が、
さらに出てきました。
スティーヴは全11曲、
10曲に参加していますが、
ニコが参加した曲のみ、
クレジットされていません。
収録時間
前作同様、
全体のバランスを意識しているように思えます。
5分台:3
6分台:2
7分台:2
8分台:2
となっています。
9分越えの曲はありませんでした。
私は、このアルバムあたりから、
楽曲の長さが気になり始めた印象だったので、
やや意外でした。
サウンドプロダクション
前作に引き続き、
ケヴィン・シャーリーがプロデューサーです。
前作では、復活メイデンの生々しさを、
上手くパッケージできたので、
引き続いての採用になりました。
前作は敢えて、
やや粗削りな音作りを狙った印象でしたが、
今作はより洗練させた印象です。
そのため、安定感がありますが、
良くも悪くも予定調和的です。
ちなみに、当時本作の国内盤は、
悪名高きCCCD(コピーコントロールCD)でした。
音が悪いと言われていましたが、
実際のところどうなんでしょう。
私は特に意識しなかったです。
ただ、このCCCDに纏わる、
浅倉大介(access)の逸話は大好きですね。
プロのミュージシャンなら、
やっぱり音質に拘るのが普通でしょう。
この辺の曲とか、
未だに音質良くてビックリします。
(原曲CDの話ですが)
アルバムジャケット
『死の舞踏』というタイトル通りの、
仮面舞踏会風イラストです。
当時パッと見は気づかなかったのですが、
これCGなんですよね。
一見ちょっと格好良い雰囲気ですが、
よく見ると、実はチープな感じもします。
エディは、前作の気体から一転して、
死神風のコスプレです。
これはなかなか格好良いです。
全曲レビュー
国内盤
一曲目は、スティーヴとエイドリアンの共作で、
第一弾のシングルカットです。
ブルースの楽曲にも似ていますが、
彼は参加してません。
ニコのカウントから入る曲で、
オープニングにふさわしい疾走曲です。
曲名通りの、
前向きでタフなイメージの歌詞です。
しかし、
前作の『ザ・ウィッカー・マン』と比べると、
ややインパクトに欠けます。
同じようなことを、
国内盤特典のブックレットで、
伊藤政則氏が発言していました。
「一曲目がなあ〜」といった感じです。
氏のメイデンに関するネガティヴな発言は、
かなり珍しいため、当時印象的でした。
個人的には、この曲の地味さが、
このアルバム全体を体現していると思います。
デイヴ・スティーヴ・ブルースの共作です。
(この曲のPVは、
Youtube公式にはありませんでした。
なぜでしょう・・・。)
こちらは第二弾のシングルカットになっています。
「これぞデイヴ」というギターメロから始まります。
こういうリバーヴがかかったギターメロは、
デイヴのセンスが光ります。
途中のギターソロから、
続くツインリードの流れも素晴らしく、
曲もコンパクトで無駄がないです。
このくらいのクオリティの楽曲が一曲目だったら、
またアルバムの印象も変わったはずです。
歌詞も引き続きポジティヴで、
当時のバンドのムードを表しています。
スティーヴ単独の曲です。
出だしからして、
どこかで聴いたような曲です。
『ザ・クランスマン』あたりが、
一番似ていますでしょうか。
アルバムをこの辺りまで聴くと、
ここ数作のアルバムと、
構成が似ていることに気づきます。
このアルバムが私にとって、
地味な作品と感じてしまうのは、
この冒頭の流れが理由です。
但しこの曲は、
どこかで聴いたような曲ではあるものの、
途中のメロディも展開も、
クオリティの高いメイデン曲なのは、
間違いありません。
ヤニックとスティーヴとブルースの共作です。
まさに、ヤニックらしいギターリフ満載の曲です。
正直、アルバム中最も印象の薄い曲です。
こういった、やや重めのギターリフの曲は、
アルバムの中盤に、
繋ぎ的に配置されることが多い印象ですが、
これを挟むくらいなら、
もうちょっと実験的な曲を入れて欲しいです。
ちなみに歌詞は、メイデンっぽい、
中世ヨーロッパの歴史に纏わるものです。
アルバムタイトルトラックは、
ヤニックとスティーヴの共作です。
ヤニックの曲がタイトルトラックになるのは、
本作が初です。
私は散々ヤニックには辛めの感想しか、
書いてこなかったですが、
この曲は本当に素晴らしいです。
ヤニック好きの皆さんすいませんでした。
アコギから入るパターンの曲で、
冒頭から「おっ」と思わせます。
その後、バラードのまま進んでいくと思わせて、
フラメンコばりの流麗なギターから、
突如ディストーションサウンドに切り替わります。
これを初めて聴いた時は嬉しかったですね。
冒頭三曲の流れを聴いた時は、
正直、メイデンは「置き」にいったな、
と思いましたが、
この曲で、良い意味で裏切られました。
これまでにはないパターンの一曲で、
タイトルトラックにしたのもうなづけます。
ヤニックには、疾走曲よりも、
こういうギターをフィーチャーした、
実験的な曲を任せた方が良いでしょう。
ヤニック・スティーヴ・ブルース三人の共作です。
4曲目『モンセギュール』と同じ構成です。
嫌な予感がします。
冒頭のギターは、
『Xファクター』にあった
『ロード・オブ・ザ・フライズ』っぽいですが、
あっちのダークな雰囲気の方が、
圧倒的に好きですね。
さっきは、
『モンセギュール』が一番印象薄い、
と書きましたが、
すいません、こっちの方が薄いです。
5分強と短めの曲ですが、長く感じられます。
どこをどう切っても、
まさにメイデンな一曲ですが、
没個性的としか言いようがありません。
ニコとエイドリアンとブルースの共作です。
史上初、ニコのクレジットされた曲です。
この曲はサビのメロディがかなり良いです。
サビ裏のちょっと引っ張る感じのギターも、
良いアクセントです。
中盤かなり大きく展開させますが、
素直に格好良いです。
これくらいのクオリティの楽曲が、
もっと中盤にたくさんあれば、
さらに良いアルバムになったのですが・・・。
とにかく、ニコの株は爆上がりですね。
エイドリアンとスティーヴの共作です。
第一次世界大戦に関する歌詞で、大長編です。
イントロのギターのタッピングから、
一転激しく曲が始まりますが、
70年代プログレのような、
ややレトロな雰囲気のある曲です。
タイトルトラック同様、
8分台とアルバムでは長い曲ですが、
その分構成・展開も凝っています。
メイデンの歴史でも、
ここまでプログレッシブな構成は、
史上初ではないでしょうか。
歌メロも良いし、ギターも良いです。
ただし、全体的にややツギハギ感があって、
統一感に欠けるため、
実時間より長めに感じてしまいます
『暗黒の航海』は長くても退屈しない、
素晴らしい曲でした。
これは、そもそもの楽曲自身が持つ、
リフの強度の差かもしれません。
これだけ長く活動していると、
格好良いギターリフを、
新しく発明し続けるのは、
相当困難でしょうけどね。
エイドリアン・スティーヴ・ブルースの共作です。
冒頭から、かなり格好良い展開です。
SEも凝っていて、気合入ってます。
ニコはツーバスにしか聴こえないプレイですね。
オープニングかなり盛り上げた割には、
サビや展開はやや地味です。
ブルースの歌唱は素晴らしく、
ライブで合唱できそうなコーラスもありますが、
正直なところ、「もう一声」と思ってしまいます。
ただ、クオリティは確実に高いです。
デイヴとスティーヴの共作です。
ギターリフがちょっとダサいです。
味と言えば味ですが・・・。
ただ、この曲はサビが良いです。
どこか清々しい雰囲気のある曲で、
この辺はデイヴのセンスでしょうか。
ギターソロもまさにデイヴのそれです。
後半かなり強引に展開させますが、
個人的にはこの曲は、
この素敵なサビのメロディを、
フィーチャーした、
シンプルな曲の方が良かったように感じます。
最後は、
エイドリアン・スティーヴ・ブルースの、
本アルバム二度目の共作です。
当時はメイデン初のアコースティックバラード、
と言われたように記憶しています(確か)。
このアルバムのラストに、
この曲を持ってきたのは、好感が持てます。
歌メロが素晴らしく、
ブルースの実力が遺憾なく発揮された名曲です。
これは絶対ブレイズには真似できないでしょう。
まあ、ブレイズにも、
彼なりの良いバラード(?)がありましたけどね、
(『2AM』とか)
それはさておき、
このオーケストレーションによるアレンジは、
メイデン史上初の試みですね。
展開も変にアレンジすることなく、
歌メロをストレートに盛り上げます。
メイデンに何を求めるかは、
人それぞれだと思いますが、
個人的には、
メイデンというバンドが持つ、
素晴らしいメロディが好きなので、
バラードだろうがなんだろうが、
良いものは良いです。
ちなみに、
『ジャーニーマン』というと、
メイデンと同じNWOBHM出身の、
プレイング・マンティスが思い出されますが、
こちらも素晴らしいです。
この曲は、
アメリカンハードロックに聴こえますけどね・・・。
採点 / オススメ名曲ランキング
1位『Dance Of Death』
2位『Rainmaker』
3位『New Frontier』
4位『Journeyman』
総括
このアルバムは採点が難しいです。
クオリティは確実に高く、
タイトル曲や『レインメーカー』、
ニコの書いた『ニュー・フロンティア』、
最後の大作バラードなど、
聴きどころは多いです。
ブルースの歌唱も最高で、
演奏も文句の付けようがないです。
しかし、アルバム全体を見たときに、
没個性的な曲も多く、
中盤にかけて、やや中だるみします。
このあたりは、
前作でトリプルギター編成になって、
本作ではバンド体制が安定したことが、
逆に作用してしまったように感じます。
一曲一曲バランスを取って、
曲のクオリティを上げようと、
足し算し過ぎているように感じます。
例えば、ブルースやエイドリアンが、
単独で書いた曲が数曲入っていれば、
アルバムとしてのクオリティは、
更に上がったのではないでしょうか。
終わりに
前回記事で、私はこの時期から、
メイデン熱が一時的に冷めたと書きました。
2003年頃は、数年前に流行ったヘヴィロックや、
ミクスチャーロックもやや落ち着いてきた時期で、
個人的には、
オルタナティブ・ロックや、
テクノ・エレクトロニカに、
ハマっていた時期です。
より新しいものに刺激を求めていた時に、
ある種メイデンの安定感ある作品は、
退屈に思えました。
しかし今、
時を経て改めて聴き直すと、
本作はメイデンの集大成といえる、
作品だったようにも思えます。
次作からは、
大御所ベテランバンドながらも、
新たなチャレンジを始めます。
【おまけコラム/メイデンと私⑬】それほど盛り上がってない?
2000年、
『ブレイヴ・ニュー・ワールド』に伴うツアーで、
来日が決まりました。
当時学生だった私は、
最近メイデンを聴くようになった
非メタラーな友人と、
ライブに行くことにしました。
チケットは難なく取れました。
会場は、今はなきZEPP OSAKAです。
当時、大阪南港にあったライブハウスです。
キャパ約3,000人程度のハコですが、
前回のIMPホールが1,500人だったことを考えると、
倍のキャパの会場です。
しかし、ブルースとエイドリアンが復帰して、
メタル界は大騒ぎしているのに、
それでも3,000人くらいのキャパです。
思えば、IMPホールでのライブは、
わずか1,500人のキャパでも、
やや空いているよう感じがありましたので、
まだ彼らの復活人気に、
プロモーターは半信半疑だったのかもしれません。
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