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【テクニカル路線の極北】メガデス『United Abominations』【MEGADETH/全アルバムレビュー】

メガデス UA 写真 ブログ用 1 音楽

トトオです。

今回はメガデス通算11作目、『ユナイテッド・アボミネイションズ』をレビューします。

前回の記事はこちら。

今回の記事のポイントはこちらです。

トトオ
この記事の
ポイント

テクニカル路線の極北

『United Abominations(ユナイテッド・アボミネイションズ)』(2007年発表)

結論

まず結論です。

本作は、「インテリクチュアルスラッシュメタル」の、

インテリクチュアル」な部分を究極まで煮詰めた作品

です。

では、いってみましょう。

概要

メガデス・メタリカ年表

2003/6 St. Anger (METALLICA)
2004/9 The System Has Failed (MEGADETH)
2007/5 United Abominations (MEGADETH)
2008/9 Death Magnetic (METALLICA)

メタリカ、メガデス共に、2000年代前半に解散の危機(メガデスは実際に解散)がありましたが、後半にかけてはバンド体制も整い、安定的に活動していくことになります。

メタリカはベースだけが交代となりましたが、メガデスはムステイン以外全員交代となっており、この差が作品にも影響していきます。

前作『The System Has Failed』は、元々ムステインのソロプロジェクトとして作られた作品でした。

次作である本作は、メガデスというバンド名義での本格再始動となります。

新ラインナップは「兄弟」とロメンゾ

本作は、正式にバンドラインナップを更新した上で、レコーディングしています。

まず、ベースがジェイムズ・ロメンゾです。彼は本作と次作、ジュニアが復活するまで、結果的に繋ぎのような形でバンドを支えます。

注目がギターとドラムで、なんと兄弟です。

ギターは弟のグレン・ドローヴァーですが、結果的に彼のメガデスのキャリアは本作のみとなりました。

メガデスでギタリストを任されるだけのことはあり、とんでもないテクニックです。彼の最大の特徴はスピードです。

とにかくはちゃめちゃに早く、スリリングなギタープレイです。

しかし、マーティやジェフあたりと比較すると、個性の面では少し地味かもしれません。

ドラマーは、グレンの兄であるショーン・ドローヴァーです。さすがは兄弟(?)だけあって、彼も恐ろしく速いです。

弟グレンは本作のあとバンドを離脱しますが、兄ショーンはその後もバンドを支え、10年近く在籍することになります。

楽曲レビュー

究極まで煮詰めた「インテリクチュアル」

新メンバーに支えられた新生メガデスですが、本作はムステインの思い描くインテリクチュアルスラッシュメタルの具現化という意味では、ほぼ完璧に近い作品でしょう。

『Sleepwalker』はオープニングに相応しい大仰なアレンジで格好良く、続く『Washington Is Next!』は、新生メガデスの顔的な名曲です。

全体的にボーカルがキャッチーで、リフも格好良いものが多く、どれも曲時間は短めです。

最終曲『Burnt Ice』は、2000年代以降のメガデス楽曲の最高傑作のひとつです。

(ちなみに、ビデオのライブでは、ギターがグレンではなくクリスです)

テクニカルなプレイと、魅せる構成の楽曲が非常に多いです。

曲後半にかけて尻上がりに爆走する楽曲が中盤以降多く、一聴しただけでは曲を覚えるのが難しいほどです。

良くも悪くも「らしい」作品

しかし、本作にはいくつか弱点があります。

まず、本作固有のアルバムカラーが薄い、と言う点です。(楽曲面)

現代風な言い方をすれば、

AIに「メガデスの新作を作って」

と、お願いしてできあがったような、予定調和的な作風です。

完成度は間違いなく高いのですが、悪い意味でファンの期待に応えすぎているような印象です。

これは、メンバーの実力が高くても、バンドとしてのキャリアは浅い、ということも一つの要因かもしれません。

新生メンバー支えるソロプロジェクト

90年代のメガデスは、最強のメンバーに支えられた孤高のスラッシュメタルバンドといった感じでした。

比較して本作のメガデスは、天才ムステインのソロプロジェクトを支える最強メンバー、という感じです。

黄金ラインナップと比較して、バンドとしての魅力に欠けるというのは、厳然たる事実でしょう。

本作では『À Tout le Monde』が再録されていますが、圧倒的にオリジナルの方が格好良いです。

ここにすべて集約されているのではないでしょうか。

迫力に欠けるその「軽さ」

前作はソロ名義の作品を結果的にメガデスの作品として発表した、という特殊な経緯がありました。

そのため、バンドの一体感やグルーヴにやや物足りなさがありました。

本作は新メンバーを迎え、体制が整えられて制作された結果、明らかに楽曲の完成度やバンドアンサンブルが向上しました。

しかし、本作で気になるのが、その音質です。端的に言って、軽いです。

本当に不思議なくらい軽快な音質でミックスされています。

速さを重視した結果、バランス的に軽く仕上がったのかもしれません。

もしくは、2007年という時代的な背景として、新興のモダンなヘヴィメタルとの差別化を図るために、敢えてそのような仕上げとなったのかも知れません。

実際の理由はわかりませんが、ギターディストーション・スネア・バスドラ、総じて迫力に欠けるため、突進力が弱く、正直ちょっと物足りません。

この軽さをどう表現すれば良いかわかりませんが、ガンマ・レイ的な軽さといえば、お分かりいただけますでしょうか。
(注:ガンマ・レイは大好きです)

本作はキャッチーな楽曲が多いので、曲調にはハマっているのですが、やや迫力に欠けます。

採点

『United Abominations』/ 92点
トトオ
トトオの
オススメ
ランキング

1位『Burnt Ice』
2位『Sleepwalker』
3位『Washington Is Next!』
4位『You’re Dead

総評

メガデスのファンには、文句なしでオススメできる傑作です。

インテリクチュアルスラッシュメタルというスタイルの一つの完成系であり、間違いなく彼らの代表作の一つです。

特に高ポイントな点は、サビにキャッチーなものが多いところで、前作同様に幅広く受け入れられる可能性のある作品です。

しかし、軽い音質は正直ややもの足りません。

また、中盤にもう一曲くらいキラーチューンが欲しかったというのは、欲張りすぎでしょうか。

終わりに

本作は素晴らしい完成度の作品です。

しかし、完成度が高く、安心して聴ける作品になった結果、メガデス特有のスリリングさに足りず、退屈に感じられる面もあります。

次作もこの方向性だと、マニアックなファンしかついていけないのではないか、などと心配しましたが、その心配は杞憂に終わります。

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