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【三人のプロフェッショナル】SOFT BALLET 全アルバムレビュー⑥『MENOPAUSE』(ワーナー時代)

MENOPAUSEMENOPAUSE 写真 ブログ用 1 音楽

トトオです。

長らく続いたソフトバレエの作品レビューも、今回が最終回です。

2003年発表、最後のオリジナルアルバム『MENOPAUSE』になります。

前回の記事はこちらです。

本作のポイントは以下の通りです。

ソフバの集大成的な内容
プロフェッショナルに徹した三人の個性
上がる解像度と薄まる90年代のカオス

『MENOPAUSE』概要

『MENOPAUSE』から「大団宴」

2000年代再結成後の二作品のうちの二枚目であり、ソフトバレエの最後のオリジナルアルバムです。

『MENOPAUSE』は「更年期」「閉経」という意味です。

バンドや個々人のキャリアが「すでに若手ではない」という意味合いから、採用されたようです。

この後にラストツアー「大団宴」を行い、再び活動休止となります。

入手困難な現状

前作と本作はワーナーから発売されましたが、どちらも現在廃盤です。

他作品は過去に再発されたことがありますが(アナログ盤含む)、この二枚はありません。

また、SpotifyやApple Musicなどのサブスクでも、この二枚だけは外れています。

そのため、この音源を聴くためには、高価な中古を購入するしかありません。

楽曲レビュー

Nirvana ~ Heleben Sahar

長いインストの一曲目から続く二曲目ですが、どちらも完全にオルタナティヴロックです。

特に一曲目は、まさにニルヴァーナの『In Utero』あたりを思わせる生々しいサウンドです。

冒頭に持ってくるということは、本作の方向性をここで示唆していると言えるでしょう。

それにしても、『Heleben Sahar』とはどういった意味なのでしょうか・・・。

Smashing The Sun

4つ打ちビートが気持ちいい、キャッチーなロック曲です。

90年代との明確な違いとしては、歌詞と歌声がワイルドになった点でしょう。

以前の中性的な怪しさが薄れ、その代わりに男性的な逞しさが前面に出ています。

楽曲もそれに合わせた力強いアレンジです。

Ascent -die a peaceful death

本作の中でも、特に好きな一曲です。

オウテカばりのゴリゴリのドリルンベースに、ポップな歌が乗ります。

音の密度・解像度共に高く、やはり2000年代のテクノロジーの進歩を感じます。

Realize

ポップでキラキラ、前作収録でもおかしくない軽快なビートの一曲です。

ノイジーなエフェクトを随所に差し込見ながらも、キャッチーな歌でまとめあげています。

H158

定番とも言えるノイジーなインスト曲です。

本作は、強めのビートやノイジーなアレンジの楽曲が多く、普段はやや浮いているインスト曲も、調和が取れています。

Hunting Hi-Times

ソフバ流のJ-POPと言える、ポップ且つ軽快な楽曲です。

サウンドは豪華で、迫力に圧倒されます。

アコギも気持ちよく、聴いたあとは爽やかな気分に浸れます。

それにしても、一つの作品でこれだけ曲調が異なっても、違和感なく聴かせるのは凄いですね。

Your Web

本作最大の聴きどころがこの楽曲です。

緻密に計算された電子音の波と、ボーカルがシンクロし、淡々としたビートから徐々に盛り上げていきます。

ソフバ流のエレクトロニック・ボディミュージックの集大成でしょうか。

ボーカルの多重録音が大変格好良く、唯一無二とも言える遠藤遼一の存在感です。

Bright My Way

シングルカットらしく、歌謡ロックと言えるくらいキャッチーな一曲です。

しかしやはり、前作よりもアレンジは激しく、本作のアルバムカラーと調和させています。

デビュー時と比べると、同じグループとは到底思えないルックスの変わりようですね。

Incoherent And Confused (full of bombast)

前曲のアウトロから続く、ジャーマンインダストリアルメタル調の一曲です。

ラストに行く前にこの曲を挟んだことで、このアルバムの多様性が強調されています。

土縋り

オープニング同様のオルタナロックナンバーで、締めです。

これ読めますか?「つちすがり」って読むようです。

ソフバ史上初の和文タイトル曲です。

歌はキャッチーですが、音響が強烈でダウナーです。

マリリン・マンソンの2000年の『Holy Wood』のような、インダストリアルメタル通過後のヘヴィロックです。

ちなみに、あの作品のプロデューサーはDave Sardyです。

まさに90年代のオルタナを作り上げた一人と言っても過言ではなく、この辺の影響は確実でしょう。

本作は、頭とラストをオルタナロックでサンドイッチしており、やはり軸はここに置いているようです。

MARDOCK (隠しトラック)

ラストに隠しトラックが収録されています。

お遊び的に入れられたものかと思いますが、どこか英米のハードコアパンクっぽい楽曲で、楽しいです。

Dischargeあたりを想起しましたが、彼らのルーツの一つなのでしょうか。

まとめ

オルタナとエレクトロのクロスオーバー

今改めて本作を聴くと、やはり当時の時代背景を感じざるを得ません。

2003年はレディオヘッドが『Hail to the Thief』を発表した年でした。

いわゆるオルタナロックバンドがエレクトロと融合した作品を出すというトレンドがありました。

本作『MENOPAUSE』は、エレクトロバンドがオルタナロックを取り込む形となっています。

レディオヘッドとは逆のアプローチですが、たどり着いたスタイルは似ています。

元来の三人の個性と、このスタイルは相性が良く、ここまでの完成度の作品ができあがったのでしょう。

90年代よりも明らかに解像度が高いサウンドは、バンドを確実にアップデートさせています。

真にプロフェッショナルな作品

反面、彼ら独特の「得体の知れなさ」「不気味さ」が薄まった感覚もあります。

リスナーの予想の斜め上を行くような、「危なっかしい」ソフトバレエはあまり感じられません。

しかしこれは、彼らに限った話ではなく、90年代に素晴らしい作品を出したアーティスト全てに通じるところでしょう。

彼らの演者のレベルが上がり、さらにプロフェッショナルに徹した作品と言えるのではないでしょうか。

オススメ名曲ランキング

トトオ
トトオの
オススメ名曲
ランキング

1位 『Your Web』
2位 『Hunting Hi-Times

3位 『Ascent -die a peaceful death

終わりに

ソフトバレエは、文句なく海外バンドとタメを張れる、数少ないグループの一つだと、改めて感じました。

本作以降、ソフバとしての新作は残念ながらありません。

そして、三人の新しい作品が今後生まれることはありません。

既述の通り、本作と前作はかなり入手しにくい現状です。

この二作がソフバのラインナップにあるかないかで、このグループの印象はかなり変わります。

2000年代の素晴らしい二作品も、今後多くの人に触れやすい環境になることを祈って、レビューを終わりたいと思います。

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