トトオです。
今回は、メガデス通算10枚目のアルバム『The System Has Failed』をレビューします。
前回の記事はこちらです。
今回の記事のポイントはこちらです。
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ポイント
メガデイヴ劇場開幕!一人でもメガデス
『The System Has Failed(ザ・システム・ハズ・フェイルド)』(2004年発表)
結論
では、まず本作の結論を述べます。
レビューいってみましょう。
概要
本作は2004年9月に発表されました。
前作『The World Needs a Hero』が2001年5月でしたから、3年4ヶ月のインターバルです。
インターバルとしてはやや長めですが、この期間にバンド史上最大の危機が訪れます。
「俺バンド辞めるねん」の衝撃
と言うのも、前作発表後に、「ムステインがメガデスを辞める」という、事件が起きたのです。
前作は正直なところ、消化不良気味の作品でした。
しかし、私はまだメガデスのファンでしたし、次はどんな作品かと楽しみにしていました。
そんな時に突然ムステインが、
「腕の病気になってギター弾けへんから、もうバンド辞めるねん」
という衝撃の知らせです。
いや、本当にこれガックリ来ましたね。
「当面は治療に専念」とかならまだわかるんですけど、「もうバンド辞める」ですから。
ショックで、しばらく立ち直れないくらい落ち込みました。
しかし、私も日々の生活がありますので、時間をかけながら、なんとか気持ちを落ち着かせたのです。
「俺やっぱりやるねん」の衝撃
それからしばらく経った、ある日。
「俺、腕治ったからまた音楽やるわ」
という、復活ニュースが入ってきました。
正直、このニュースを聴いた時は、嬉しいというよりも、腹が立ちましたね。
そんなんやったら「軽々しく辞めるとかいうなや・・・」と。
しかし、そのニュースは当初、「ムステイン復活ではあっても、メガデスの復活ではない」というものでした。
もう訳がわかりません。
しかし、最終的に本作は、メガデス名義の新作に落ち着きました。
メガデス・メタリカ年表
2003/6 St. Anger (METALLICA)
2004/7 Some Kind of Monster (METALLICA)
2004/9 The System Has Failed (MEGADETH)
上記の通り、『The World Needs – 』と『The System Has – 』の間に、メタリカがアルバム『St. Anger』と、『Some Kind of Monster』というビデオ(映画)を発表しています。
興味深いのが、この『Some Kind – 』というドキュメンタリー映画に、ムステインが出演していることです。
ムステインが出演したのは、2001年の夏頃と見られます。
まだ『The World Needs – 』のバンドラインナップの時です。
この映画では、メタリカがバンド解散の危機の時に、ムステインにインタビューしたわけですが、その後すぐにメガデスも一時解散してしまうわけで、奇妙な因縁を感じます。
楽曲レビュー
パイプ椅子に男一人
クリス・ポーランドの「参加」
切磋琢磨がないゆえに?
一人なのに、もっと「メガデス」
本作は、バンド名義で発表されたものの、元々はソロ名義の作品とされる予定でした。
また、長年の相方(?)である、ジュニアが参加しない初めてのメガデス作品です。
そのため、メガデスというパブリックイメージからかけ離れた作品になるのでは、という不安がありました。
しかし、蓋を開けてみると、前作以上にメガデスらしい作品に仕上がっていて驚きです。
特に、冒頭三曲は素晴らしい出来です。
80年代後半から90年代前半の、コンパクト且つエッジの効いたリフ満載のスラッシュメタルです。
この曲なんか、『So far – 』あたりに入ってそうじゃないですか?
90年代後半の経験も活かされており、サビはかなりキャッチーで、文句のつけようがないです。
しかし、気になるのが音質です。
黄金期と比較するとグルーヴが薄く、ギターのディストーションもやや迫力に欠けます。
このあたりに、ソロ名義の作品として制作された経緯を感じます。
パイプ椅子に男一人
ちなみに、本作は当時エンハンストCDになっており、 PVが見られる仕様になっていました。
(まだYouTubeがない時代)
このPVが、私には悪い意味で強烈な印象でした。
今見るとそうでもないのですが、当時の私の印象は、
「ムステインがパイプ椅子に座って、一人でぶつぶつ言うてるだけ」
というものでした。90年代のPVでは、
セットに金がかかっていて、メンバー全員の見栄えも良く
だったのに、今や、
ムステイン一人でパイプ椅子・・・
メンバーもいなくなり予算もないと、ここまでしょぼくなるのか、と強烈な印象を受けました。
(繰り返しますが、当時の記憶です)
クリス・ポーランドの「参加」
本作の目玉は、クリス・ポーランドのゲスト参加です。
彼は初期のメガデス流インテリクチュアルスラッシュメタルの立役者の1人です。
(『Killing Is – 』と『Peace Sells』は彼)
約20年ものブランク後の参加になりますが、恐ろしく良い仕事をしています。
曲の後半にギターソロバトルがありますが、2:21~はムステインで、3:20~がクリスです。
タイプの異なる個性がぶつかり合っていて、しかもどちらも切れ味抜群で最高です。
正式なバンドメンバーではなく、ゲスト参加はなかなか良いアイディアです。
求められた仕事を、必要十分にプロフェッショナルにこなしています。
ちなみに、クリスの前にはマーティにも声をかけたらしいですが、日本での活動が忙しく、断ったらしいです。
個人的には、クリスでよかったと思います。
切磋琢磨がないゆえに?
しかし、バンドメンバー不在という状況は、後半の展開に如実に現れています。
後半目玉は『Back in the Day』や『Of Mice and Men』あたりですが、かなり格好良いです。
(当初は)ソロ名義で、このタイトルでこのPV・・・。
しかし、それ以外の楽曲があまり耳に残りません。
音質については少し触れましたが、リズム隊の個性が薄いです。
間違いなく上手いのですが、悪く言うと無難に感じます。
ちなみに、本作の収録曲は12曲です。
前奏曲のような『I Know Jack』や、旧約聖書を引用した『Shadow of Deth』などは「つなぎ」的な楽曲であるため、実質は全10曲程度と言えます。
このように、決して曲数が多いわけではないのに、後半印象が薄く感じられるのは残念です。
「バンドメイトとの切磋琢磨がない」、これが理由ではないかと、勝手に推察します。
採点
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1位『Kick the Chair』
2位『Die Dead Enough』
3位『Blackmail the Universe』
4位『Back in the Day』
総評
既述の通り、ソロ名義で制作されたにも関わらず、前作よりもメガデスらしい作品に仕上がっています。
完成度も上々で、大半のメガデスファンは前作より満足したはずです。
本作から、「ムステインのソロプロジェクト=メガデス」という印象は強くなりました。
まさに本作は、メガデイヴ劇場の幕開けと言えるでしょう。
終わりに
一旦解散にまで至ったバンドですが、本作が起死回生となりました。
結果、バンドは再び人気を取り戻します。
メタリカがもはやメタルという枠組みから出てしまった後、ガチメタラーの期待に応えたのは、元メタリカという肩書きで、メガデスを一人で演じるムステインでした。
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