【ARTIST INDEX】アーティスト名記事検索はコチラ
スポンサーリンク

【進化の終焉】メガデス『The World Needs a Hero』【MEGADETH/全アルバムレビュー】

メガデス TWNAH 写真 ブログ用 1 音楽

トトオです。

今回は、メガデス通算9作目のアルバム、『ワールド・ニーズ・ア・ヒーロー』をレビューします。

前回の記事はこちらです。

本作のポイントはこちらです。

トトオ
本作の
ポイント

マーティ脱退!素うどん化したメガデス

『The World Needs a Hero(ワールド・ニーズ・ア・ヒーロー)』(2001年発表)

結論

本作の結論を先に述べます。

ニックが抜け、マーティも抜け、長年バンドを支えた黄金期メンバーが不在の中、本作は制作されました。

その結果、楽曲のフォーマットだけは黄金期のスタイルを踏襲しながらも、中身は明らかなパワーダウンとなりました。

言うなれば、器だけは豪華に見えても、実際は具や薬味のない、素うどんのような作品と言えます。
(かけうどんも可)

概要

通算9作目のオリジナルアルバムです。

前作から2年後の、2001年5月に発表されました。

ついにマーティ脱退

賛否両論でも、どちらかというと「否」を巻き起こした前作『Risk』の発表後、ついにマーティが脱退しました。

『Risk』は素晴らしい作品でしたが、メガデスにこれを求める人は多くなかった、というのが悲しい現実でした。

また、マーティは『Risk』も中途半端な作品だと感じていたようですので、彼の脱退は必然だったと言えます。

ジミーとアルの新体制

すでにドラムは前作でジミーに入れ替わっていましたが、ギターもここでアル・ピトレリに入れ替わります。

アルは、サヴァタージでの活動が有名ですが、幅広いキャリアを重ねた凄腕ミュージシャンです。
(エイジアなんかにも参加していました)

しかし、結果的に、この二人が参加したメガデスの作品は、本作だけとなりました。

キャピトル離脱と初ベスト

ちなみに、本作発表前に、初のベスト盤が発表されています。

このベスト盤が、古巣のレーベル・キャピトルでの最終作となりました。

レーベルの求める方向性が、バンドの意向から大きく乖離していたことが、移籍の原因だったようです。

このベスト盤には、

Kill the King
Dread and the Fugitive Mind

という二曲の新曲が収録されていました。

『Dread – 』は、本作『The World Needs a Hero』にも収録されました。
(当時は『Kill – 』の方が好きでした)

ジャケット

いや・・・

このジャケット・・・

どうなんですか?

メガデス TWNAH 写真 ブログ用 2

「これはないやろう」というのが、当時の感想です。

ムステインを突き破って出てくる演出はわからなくもないのです。

しかし、なんかムステインがニット的な服を着ているのが違和感で・・・。
(何を着ても変ですが)

やはり不評だったのか、リマスター盤のジャケットからは、ムステインは消えました。
(これはこれで・・・)

メガデス・メタリカ年表

本作は、前作『Risk』から2年弱で発表しており、インターバルとしては比較的短いです。

1997/11 Reload (METALLICA)
1999/8 Risk (MEGADETH)
2001/5 The World Needs a Hero (MEGADETH)
2003/6 St. Anger (METALLICA)
こうやって見ると、メタリカが『Reload』から『St. Anger』まで、いかに長かったかよくわかります。

この間、メタリカにとっては、ジェイソンが抜けるという事件がありました。

やはりキャリア20年ともなると、どのバンドも色々あって当然ということでしょう。

リマスター比較

これまでの作品は、単なるリマスターではなく、リミックス作品でもあったので、オリジナルと内容が大きく異なりました。

本作以降は、リミックスではなく、単なるリマスターであるため、それほど大きな変化はありません。

そのため、本作以降は比較記事は書きません。

全曲レビュー

本作の特徴は、下記の三つです。

規格外バンド、進化の終焉
話題のブースト『Return to Hangar』

黄金期の残滓と呪縛

#1 ディスコネクト – Disconnect – 5:20

オープニングにも関わらず、地味な一曲です。

ここではっきりわかることは、ギターのディストーションにあまりエッジがなく、ベースとドラムは前作の延長線上でややマイルドなところです。

リフに、かつてのような強烈なフックはありません。

#2 ワールド・ニーズ・ア・ヒーロー – The World Needs a Hero – 3:52

タイトル曲だけに、気合が入ったアレンジです。

この曲でも明らかですが、ジミーはテクニカルで良い仕事をしています。

ニックのような強烈な個性はありませんが、丁寧且つ安定したプレイで貢献しています。

ギターソロがもう少しスリリングだったら・・・というところでしょうか。

#3 モト・サイコ – Moto Psycho – 3:06

前作に近いインダストリアルなフレーバーと、キャッチーなサビが格好良い曲です。

但し、本作は全体的に簡素なアレンジの楽曲が多いため、この曲だけやや浮いて聴こえます。

#4 サウザンド・タイムス・グッドバイ – 1000 Times Goodbye – 6:25

『Wake Up Dead』で登場した、ダイアナが再登場する楽曲です。

女性ボーカルと対話になっていて、これまでにない新趣向です。

地味ながらも渋いリフで、徐々に盛り上がる演出も良いです。

後半さらにもうひと展開くれば、「インテリクチュアルスラッシュメタル健在」と、言えたのではないでしょうか。

#5 バーニング・ブリッジズ – Burning Bridges – 5:20

本作でも一番良い曲です。

リフも歌メロも、メロウで格好良いです。

後半の疾走する展開は、2000年代後半の新生メガデス路線のベースのようにも感じられます。

このくらいのクオリティの曲がもっとあれば、本作の印象は違ったでしょう。

やや、アリス・イン・チェインズぽいな、と言うのは野暮でしょうか。

#6 プロミシズ – Promises – 4:26

オーケストレーションも入ったバラードです。

キャッチーで耳に残るサビが印象的です。

脂が乗ったムステインの歌も素晴らしく、これこそマーティが目指した方向性の一つかもしれません。

#7 レシピ・フォー・ヘイト…ウォーホース – Recipe for Hate… Warhorse – 5:19

アルもクレジットされた一曲です。

ムステインとアルのギターバトルが楽しめます。

アルのメガデスでのプレイは、結果的に本作のみとなりましたが、文句なく上手いです。

但し、スリリングさには欠け、無難なプレイに聴こえてしまうのが、マーティ後任の辛いところです。

#8 ルージング・マイ・センシズ – Losing My Senses – 4:40

リフが面白くキャッチーな一曲です。

しかし、あまり耳に残らず、聴き流してしまいます。

#9 ドレッド・アンド・ザ・フュージティヴ・マインド – Dread and the Fugitive Mind – 4:25

ベストに先行で入っていた一曲です。

やはり気合が入っていて、この曲だけ飛び抜けてクオリティが高いです。

低音が太くヘヴィで、他の曲よりもエッジが立った鋭いアレンジです。

後半のギターソロも格好良く、十分メガデスのクラシックラインナップにも並ぶ出来でしょう。

ちなみに映像は、この時期に発表されたライブビデオのものです。

私はこのDVDを持っているのですが、非常に素晴らしい出来です。

このラインナップのパフォーマンスレベルの高さを、改めて感じます。

#10 サイレント・スコーン – Silent Scorn – 1:43

次曲『Return to Hangar』のイントロのような、短いインストです。

トランペットとマーチングドラムが、めちゃくちゃ渋いです。

もっと発展させても良いアレンジで、少々もったいないです。

#11 リターン・トゥ・ハンガー – Return to Hangar – 3:59

発売前の期待値をブーストさせた、『Hangar 18』の続編です。

あの名曲の続編が収録されるということで、当時大々的に宣伝していました。

かなり期待してしまっていただけに、これを聴いた時のガッカリ感は大きかったです。

リフ、歌詞、歌メロを『Hangar 18』から流用して構築されています。

後半にはちゃんとギターバトルもあります。

しかし、これを聴いた時は、

「もうマーティはいない」

という、強烈な印象だけが残りました。

但し、もしマーティが在籍していたとしても、続編を作ることに、おそらく乗り気ではなかったでしょう。

#12 ホエン – When – 9:13

オーラスです。

歌ではなく、語りが中盤まで続きます。

中盤からは、ミドルテンポのグルーヴィーな曲調です。

前作『Risk』のラストは、短くても二曲を組曲とした構成でしたが、この曲はあくまで一曲で仕上げています。

耳に残るリフもほとんどなく、ギターソロは速いものの、目新しさがありません。

90年代前半のギラギラ鋭かったメガデスは、遠い昔のことのようです。

ボーナストラック(日本盤)

#3 カミング・ホーム – Coming Home – 2:35

日本盤では三曲目に収録されました。

カントリー調の曲で渋いです。

前作『Risk』(通称「メガジョヴィ」)を作り上げた後ですので、この程度の新路線に驚きはありません。

ムステインのボーカルは上手いです。

しかし、オジーレベルの哀愁を漂わせるには、当時のムステインは若すぎたかもしれません。

採点

『The World Needs a Hero』/ 86点
トトオ
トトオの
オススメ
ランキング

1位『Burning Bridges』
2位『1000 Times Goodbye』
3位『Promisese』
4位『Dread and the Fugitive Mind

総評

最大の問題作

ドラムもギターも代わり、新体制で制作された本作ですが、メガデス史上最大の問題作と言えます。

90年代の黄金ラインナップによるフォーマットを踏襲しながらも、肝心の屋台骨メンバー不在で作り上げました。

結果、ムステイン主導の作品として仕上がりましたが、それまでのスタイルに明らかに引っ張られており、中途半端さは否めません。

ムステインの重責と休止

新体制と言っても、メンバーはまさにプロフェッショナルであり、パフォーマンスには全く問題がありません。

しかし、それが逆にこの作品の物足りなさでもあります。

ムステインは、このあと病気の影響でバンドを休止することになりますが、本作の内容やバンドが置かれていた状況と無関係とは思えません。

メガデスは一旦ここで、そのキャリアを終わらせることになります。

規格外バンド、進化の終焉

結果的に、その後すぐにメガデスは再開することになります。

しかし、復活後のメガデスは、ある意味開き直って「深化」する方向に進みます。

90年代から本作まで、単なるスラッシュメタルバンドの枠をはみ出すまでに「進化」した、規格外バンド・メガデスは、本作で完全に終了します。

終わりに

私は最初に、本作を素うどんと評価しました。
(かけうどんも可)

今回のレビューにあたり、久しぶりにじっくり聴き込みましたが、素うどんならではの旨みにも気付きました。

少なくとも、本作にはここだけにしかない楽曲があり、アルとジミーのテクニックを堪能できる唯一の作品でもあります。

問題作ではあっても、駄作ではないとして、レビューを終わります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました