トトオです。
今回のオールタイムベストは、パンテラの『Reinventing the Steel)』(邦題『激鉄』)です。
前回の記事はコチラです。
この記事は以下の方にオススメです。
圧倒的人気No. 1バンド パンテラ
90年代、私が高校生から大学生だった当時、ヘヴィミュージック好きの間で、最も人気のあったバンドは、間違いなくパンテラでした。
彼らの凄いところは、メタラー以外にも圧倒的に人気があったところです。
普段プログレが好きな奴も、パンクが好きな奴も、ビジュアル系が好きな奴も、もちろんメタラーも、ほぼ全員が、パンテラは格好良いという認識で一致していました。
パンテラはメタルか?
私は当時から、アイアン・メイデンやメタリカがフェイバリットバンドという、割とステレオタイプなメタラーでした。
当然、パンテラも好きなバンドの一つでしたが、私はいつもこう思いました。
「パンテラは、メタルか?」
当時の私には、パンテラをメタルと呼ぶことに違和感がありました。メタルというには、彼らはあまりにも規格外なバンドでした。
その後二十年ほど経過してこう思います。
パンテラは、パンテラ自体を一つのジャンルと言って良いほど、唯一無二の存在だった、と。
数あるパンテラの名盤の中でも、見過ごされがちなこの最終作が、私のフェイバリットです。
Pantera 『Reinventing the Steel』
原点回帰の先は、メタル
タイトルを直訳すると、『再発明された鋼鉄』、です。ちなみに、邦題は『激鉄』。
最高にユニークなタイトルですが、確かに本作は、過去作よりもメタル色が濃いです。
新しさを求めた過去作と、本作
過去作を振り返ると、
→ エクストリームメタルの新スタンダート
脳殺 – FAR BEYOND DRIVEN (1994)
→ グルーヴメタルの究極形
鎌首 – THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL (1996)
→ 実験性に富んだハードコアメタル
のように、
過去作では、常に新しい方向性で極限まで突き詰めてきました。
結果的に最終作となる本作は、過去作品の中でも、最もキャッチー且つ、オーソドックスな構成の楽曲で構成されています。
ギターリフに特に顕著で、以前のような複雑で予想不能な展開は抑え、比較的ストレートでシンプルなフレーズを中心に展開します。
本作は、それまでの経歴を踏まえると、退化した(ひよった)とも捉えかねられない方向性でした。当時、賛否両論あった印象です。
しかし私は、あえてオーソドックス且つシンプルさにこだわった本作に、未だに痺れます。
本物のルーツ、ブラック・サバス
当時は、メタルの元祖としてブラック・サバスが再評価され始めた時期でしたが、それはある種ムーブメント的な傾向もありました。
(「サバスはクール」と言うことがクール、のような)
パンテラは、自分たちがそのルーツから影響を受けた本物であることを証明するために、このような作品を作ったのではないでしょうか。
爆音とボーカルの異種格闘技戦
フィル・アンセルモは、パンテラのロゴが変わった『COWBOYS FROM HELL』当時、まだ普通のメタルっぽい高音スクリームの歌唱スタイルを残していました。
よく言われることですが、メタルゴッドこと、ジューダス・プリーストのロブ・ハルフォードとかなり似ています。
しかしその後、続く『VULGAR DISPLAY OF POWER』で、歌唱も、アティテュードも、完全にハードコアボーカリストに転生しました。
本作では、そんな彼の集大成とも言える、完璧なボーカルを披露しています。
『COWBOYS FROM HELL』あたりでは、まだボーカルが楽器に押されている印象もありました。本作では、激烈な楽器隊の前でも、存在感が一ミリも揺るがない、超人的なパフォーマンスです。
この作品からその後二十年ほど経過し、ボーカルの表現が多様化した現代においても、本作のフィルの歌は、未だにラウドミュージックの一つの頂点だと言えます。
夭折の天才「メタル」ギタリストの本懐
本作を最後にパンテラは解散してしまい、ダイムバッグ・ダレルとヴィニー・ポールはダメージプランを立ち上げます。しかし、バンドは皆さんの知る悲しい結末を迎えます。
私はダメージプランのデビュー作も当時フォローしましたが、あの激烈なパンテラの凄まじさは感じませんでした。楽器隊の中心メンバーは変わっていないのに、なぜここまで変わるのか不思議でした。
今思えば、やはり、フィルとレックス・ブラウンいての、スーパーバンド・パンテラだったということでしょう。
あの四人だからこそ、メタルマジックが働いたのだと、思います。
(『Metal Magic』にはフィルはいなかったですが…)
(これはこれで、結構好きな人多いと思いますけどね)
話を戻して・・・、
ダイムバッグのギタープレイの中では、本作は最もオーソドックス且つストレートです。やはり本作のテーマ通り、彼のルーツに回帰したような作風ではないでしょうか。
本作最終曲のリフを聴いてください。
パンテラ最後のオフィシャル楽曲です。
この楽曲は、中間以降のブレイクダウン(3:34あたり)が特に注目されがちなポイントですが、私は冒頭のギターリフの格好良さに痺れます。
これほど格好良い曲が、バンドの最後の曲だったということに、改めて衝撃を覚えます。
驚愕の2020年テリー・デイト ミックス
ちなみに、2020年の再発盤には、テリー・デイトが新たにミックスしたバージョンが収録されています。
当時の彼らの目指した方向性はそのままに、音が現代風にブラッシュアップされています。
ヴィニーのダイナミックかつテクニカルなプレイと、レックスのグルーヴィーなベースのコンビネーションが、さらにクリアな音像で楽しめます。
ダイムバッグのギターのエッジの鋭さも素晴らしく、今聴くなら、通常のリマスターよりこちらがおすすめです。
トトオのオススメ名曲ランキング
1位『I’ll Cast a Shadow』
2位『Yesterday Don’t Mean Shit』
3位『Goddamn Electric』
終わりに
ダイムバッグの事件もあったため、パンテラは完全に伝説のバンドと化してしまいました。
私の実感としては、バンドの人気は『鎌首』から『激鉄』あたりのころには、下降線をたどっていたように思います。
本作はパンテラの最後の一枚で、どちらかというと推されることが少ない印象です。しかし、彼らが真のメタルバンドである最大の証明が本作です。
パンテラが解散して20年ほど経過しますが、その後のヘヴィーミュージックの歴史を振り返ってみても、パンテラを更に進化させたようなバンドは皆無です。
まさに殿堂入りバンドであり、メタラーの誇りです。
コメント
パンテラは『俗悪』『悩殺』『鎌首』(全部凄い邦題…なのに曲名は言語の読みのままなのは不思議^ ^)はあったので借りました。
聴き始めると止まらなくなる魅力がありますね。友人が「『俗悪』に入っている『ウォーク』が良いよ」と話していましたが、次の曲である「○○の人〜♪」の空耳で有名な、あの曲が一番インパクトあります
>ぼく、ブースカれすさん
確かに、『俗悪』が聴きやすいですし、彼らの代表作ですね。
『激鉄』は人気が下降気味の時の作品なので、需要があまりなかったかもしれません。
今は代表者だった兄弟が2人共この世にいないのは残念でありますね…(T ^ T)