トトオです。
今回のオールタイムベストは、パラダイス・ロストの『ドラコニアン・タイムズ』です。
前回の記事はこちらです。
今回の記事のポイントはこちらです。
ゴシックメタルの深い沼
ゴシック沼にハマる
私が人生で一番メタルに入れ込んだのは、90年代です。
とにかく「メタル」と名のつくものなら全部聴こう、くらいの意気込みでした。
メタルには、非常に多くのサブジャンルがあり、そのジャンル毎に掘り下げていきました。
一番ハマったのは、メロディックデスメタルで、このブログでも散々書いています。
ブラックメタルも聴いたのですが、メロデスほどはハマりませんでした。
なんか怖かったからです。
ブラックにやや近い雰囲気ですが、ゴシックメタルにはハマりました。
耽美的且つ荘厳な独特の世界観は、他のサブジャンルにはない、格の高さを感じました。
今回は、そのゴシックメタル界の大御所、パラダイス・ロストの傑作を紹介します。
Paradise Lost『Draconian Times』(1995年)
概要
イギリスのゴシックメタルバンド、パラダイス・ロストが1995年に発表した、通算5枚目の作品です。
本作の特徴は以下の三つです。
ヘヴィではないのに「重い」
ルーツ内包とゴシックの極み
ゴシックメタル版『ブラックアルバム』
本作は、キーボードも多く使われていますが、メインはギターです。
徹底したツインギターのハーモニーで、全編に渡りメランコリックに楽曲を作り上げています。
中でも、アルペジオのクオリティが、他では聴いたことがないほどのレベルの高さです。
重曹的なアルペジオによる構築美は、メタリカに通じるところが多いです。
特に本作は、メタリカの名盤『ブラックアルバム』からの影響を感じます。
メタリカスタイルから派生したバンドは数多いですが、彼らは別格でしょう。
リバーブがかかった美しいアルペジオと、ディストーションギターの使い分けが絶妙です。
ボーカルのニック・ホルムズは、意識的にメタリカのジェイムズ・ヘットフィールドに「寄せた」歌い方をしたそうです。
確かに似ているのですが、ニックはジェイムズよりも伸びやかで、艶っぽい声色です。
(ジェイムズはもっと野太い)
本作は『My Friend of Misery』や『The God That Failed』などの、ミドルテンポのメタリカ楽曲が好きな人には、100%オススメできます。
メタリカのこの曲は、メロディックデスやゴシック系のメタルバンドから、特に人気がある印象です。
ちなみに、別バンドですが、アルペジオで美しいといえば、この曲もありましたね。
アルペジオは、ゴス系と相性がいいのかもしれません。
ヘヴィではないのに「重い」
本作は、良い意味で時代を感じさせる音です。
今のメタルバンドと比較すると低音が特徴的で、はっきり言って細いです。
(ここが『ブラックアルバム』と決定的に違う)
そのおかげで、中音域の音色が、クリアで美しいです。
このバランスは、さすがブリティッシュバンドと言ったところかもしれません。
オープニングから仰々しさマックスです。
圧倒的に暗く重苦しいにも関わらず、耽美的な響きに引き込まれます。
本作唯一の弱点はドラムで、テクニック不足が否めません。
しかし彼らは、音自体の重さではなく、メロディや演出で重さを表現しました。
(全音下げチューニングではありますが)
元々ドゥームメタルでデビューしているため、ヘヴィな表現には一日の長あり、といったところでしょうか。
また、本作の「ヘヴィ」さには、ジャケットデザインも貢献しています。
名盤にふさわしい美麗なデザインが、楽曲を更に重厚なものに仕上げています。
ルーツ内包とゴシックの極み
彼らはその後、エレポップ路線に急激に舵を切ります。
7作目の楽曲ですが、デペッシュ・モードの影響がモロに出ています。
正直なところ、オリジナリティは下がりましたが、クオリティは依然高いです。
彼らのようなゴシック系バンドのルーツとして、デペッシュ・モードを代表とする、ダークなエレポップの存在は見逃せません。
ジャンルは異なりますが、スマッシング・パンプキンズも、デペッシュ・モードの影響が強い作品を出していました。
彼らは、ゴシックメタルではありませんが、作り込まれた世界観は、パラダイス・ロストと通じるところがあります。
話をパラダイス・ロストに戻します。
彼らは、数作エレポップ系の作品を出した後、再びゴシックメタル路線に近づきます。
近作は、よりモダンな音になり、ドゥーム要素が強くなりながらも、高評価を受けています。
しかし、発表から20年以上経った今も、本作は別格的な扱いです。
25周年記念盤が発表されるほどです。
このことは実は、彼らがエレポップ路線に走る直前に本作を発表したことが、理由の一つではないでしょうか。
ゴシックメタルにこだわり抜いた
その徹底した拘りが、メタラーの心を未だに熱くさせるのだと思います。
トトオのオススメ名曲ランキング
オススメ
ランキング
1位『Yearn for Change』
2位『The Last Time』
3位『Enchantment』
終わりに
彼らは今も精力的に活動しており、近作も高い評価を得ています。
このような嗜好性の高い音楽であっても、商業的に成功できるという事実に、改めてメタルの奥深さを感じます。
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