トトオです。
前回は、メタルの歴史上の名盤である、ジューダス・プリーストの『復讐の叫び』をレビューしました。
今回は、次作に当たる『背徳の掟』をレビューします。
この記事は、以下の方にオススメです。
タイムレスな名盤と、今のゴッド
80年代という激動の時代
私が『復讐の叫び』を聴いた時点で、すでに90年代後半でした。当時でも、音質的に相当古臭く感じたことは、前回述べた通りです。
例えば80年代のメタル作品でも、1986年発表のメタリカの『Master of Puppets』は、90年代後半に聴いても、圧倒的な格好良さを感じました。
80年代とひとくくりに言っても、わずか数年で、劇的な機材の進歩や環境の変化があったということです。(メタリカは特別とは思いますが)
名盤に感動するも、ロブは今・・・
当初、古臭くて好きになれそうもなかった『復讐の叫び』ですが、聴けば聴くほど凄さが滲み出てくる作品でした。
しかし、当時は90年代後半で、ボーカルはロブ・ハルフォードではなく、ティム・リッパー・オーウェンズでした。
過去の名作と呼ばれる作品を掘り起こしながらも、当時の最新作は『Jugulator』だったわけで、
「このバンドこれからどうなるんだろう?」
と、若僧メタラーだった私でも心配しました。
当時の最新作は横に置いておいて、更に過去の名作を掘り下げることとして、『背徳の掟』を聴きました。
『Defenders of the Faith』(1984年発表)
ギリギリ攻めたアメリカナイズ
進化するゴッドの苦悩
聴くなら絶対リマスター
前半の絶妙な曲配置
オープニングの妙
『復讐の叫び』は、ブリティッシュメタルバンドの頂点を極めた作品だと思います。
続く1984年発表の本作は、その方向性はキープしつつも、更に絶妙なアメリカナイズを図った作品です。
ノリのいい疾走曲『Freewheel Burning』が、アルバムオープニングナンバーです。
前作『復讐の叫び』の大仰なオープニングと比べて、よりキャッチーで取っつきやすいです。
この楽曲は、どちらかと言うと、『British Steel』のオープニング、『Rapid Fire』をブラッシュアップしたような楽曲です。
メタリカとロブのコラボは、『Rapid Fire』が定番ですね。
(この時期のロブ・・・)
奇跡の名曲三連発
一曲目が『Freewheel Burning』で、前作よりも取っつきやすくなったかと思うと、続く三曲は驚くほどウェットでダークな名曲が並びます。
『Jawbreaker』から『The Sentinel』の三曲は、ジューダスプリーストの歴史を通じても、最高の楽曲群だと思います。
特に『The Sentinel』の細部までの作り込みは、これぞブリティッシュメタルの新らしい王道といえる、究極の出来でしょう。
ギリギリ攻めたアメリカナイズ
中盤以降で特筆すべき楽曲は、間違いなく『Eat Me Alive』です。
ストレートなリフに、キャッチーなボーカルが乗るノリの良い楽曲で、まさにラジオフレンドリーな名曲です。
かと思うと、前作に収録されてもおかしくない、メロウな『Night Comes Down』という痺れるバラードもあります。
アルバムの締めは『Heavy Duty』から『Defenders of the Faith』ですが、ブリティッシュからアメリカンへと一続きで変身するような楽曲です。
これは当時のカナダのライブ映像ですが、どれだけ彼らが北米で人気があったか、一目瞭然です。
本作は、前作の延長線上でありながらも、アメリカで売れる要素を絶妙に散りばめています。
しかしながら、この卓越したバランス感覚は、本作がピークだったと感じます。
進化するゴッドの苦悩
トレンドに上手く乗るも・・・
次作以降の『Turbo』や『Ram It Down』の内容を踏まえた上で、本作を振り返ると、プリーストというバンドの本質がよくわかります。
80年代の彼らは、時代を読むことに長けていました。キャリア十年を超えたバンドだったにも関わらず、トレンドの変化に柔軟に対応していました。
しかし、この方向性でギリギリうまくいっていたのが、本作までだったと思います。
身体能力の壁
次作からは、本来の彼らの得意分野とのギャップが、顕在化していきます。
頭の中は変化しても、手足がついていってない、というような感じです。
当時、彼らがダイアー・ストレイツのような成功を目指していたかはわかりません。
バランスをうまく取り続けられた成功例の方が、レアだと思われます。
聴くなら絶対リマスター
私が本作を聴いたときは、古い輸入盤を購入して聴きました。それはそれは、大変貧弱な音質でした。
同じ輸入盤でも、二年前に発表された『復讐の叫び』の方が、よほど迫力がありました。
本作は、アレンジが凝った作品のため、十分楽しむには、リマスターを強くお勧めします。
本作はこれまで数回リマスターされていますが、より新しい方が本作の素晴らしさを体感できると思います。
採点
![トトオ](https://totoouemachi.com/wp-content/uploads/2021/06/トトオ_Small_Renewal.png)
1位『The Sentinel』
2位『Eat Me Alive』
3位『Rock Hard Ride Free』
終わりに
プリーストの一番の人気盤は、『復讐の叫び』か『Painkiller』か、もしくは本作のどれかが、選ばれるでしょう。
進化するバンド、プリーストの特徴が最も発揮され、成果にもつながったのが、本作だったと思われます。
その後、彼らはさらに変化しますが、80年代後半から徐々に、茨の道に突入していきます。
コメント
プリーストのアルバムは、『殺人機械』と『黄金のスペクトル』以外は全部揃いましたが、一番リピートしているのは本作です。
一曲目の格好良過ぎる『Freewheel Burning』(カラオケにありますが、声質が低音の私が無理してもしなくても、あの超絶早口サビは歌える自信がありません…f^_^;)からもう、最後まで飽きずに聴く事が出来るのは完成形と思えます(^^)
尚、借りたのは、リマスター発売当時まで未発表だったライヴ音源が入っている3枚組(来日直前に、本人達が“日本のファンの皆様の為にとサービスしてくださったとか”でしたので、本編も現在でも最新のヴァージョンだったのは有り難かったです
雑誌の『昭和40年男』の昨年11月にメタル特集だった時、メタル好きな古田新太さんが好きなアルバムに挙げていましたよ(他はデフ・レパードの『炎のターゲット(原題の“Pyromania”が“放火魔”と物騒な意味と、つい昨日知りました…(・・;)』等でした)
>ぼく、ブースカれすさん
『復讐の叫び』が二大名盤ですね。私は『復讐の~』の方が好きですが、『背徳の~』も良い曲多いです。
『復讐の叫び』も名盤ですね
以後の名盤である『ペインキラー』も1990年代以降のプリーストを象徴するアルバムですが、タイトル曲かつバンドを代表する曲になってしまい、悪くは無いのですが、以後はスピード系メインになってしまった感はあります
しかし、70代に入っても活動しているのは超人的で、いつまでも出来る限り続けて欲しいと思いますよ
今も仲良くしている中学時代の同級生は洋楽はあまり詳しくはないものの、THE ALFEEを40年近く応援していますが、ガンダム等のメカ好きでもあるので、iPhoneに入れてあるプリーストの『ファイアーパワー』までのアルバムジャケットを見て「ジャケットのセンスが格好良い」と感心していました
>ぼく、ブースカれすさん
『Painkiller』は確かにそう思います。実際、これ以降は彼らはいばらの道を進みましたしね。
『Firepower』は、ファンが求めるプリースト像を突き詰めていて、これはこれで素晴らしいです。
今日、予定が無いので「なんとなく目的がないけれどバイクで走り回りたい」と隣の隣の区の図書館で知らない館へスクーター🛵で場所を確認したくて(他の区だと予約数等、制限があるので…)探し回ったら、一館にアナログレコードが集約されていて、前にも書いた気がしますが、ジューダス・プリーストではCDが置いていなかった『殺人機械』『黄金のスペクトル』がレコードで置いてありました。
プレーヤーが無いので諦めましたが、ライナーノーツを読んだら、当時は20代後半位だった『HR/HM界の日本人評論家の巨匠』と言える、“マサ・イトー”さん事、伊藤政則さんが早くも書いていました…この2作が出た頃、私はまだ小学生でしたので、伊藤さんのキャリアの長さが解ります(^^)
“お布施”として、この2枚はiTunesでダウンロードしてコンプしようと考えております(今まで無料で手に入れた事ですし…f^_^;)
尚、今回はUFOのマイケル・シェンカーがいた頃のアルバム『宇宙征服』、MSGの初期の名盤と名高い『神〜帰ってきたフライング・アロウ(この時の時点でフライングVは代名詞だったのですね)』、コージー・パウエルの『オクトパス』(ジャケットがキン肉マンのアシュラマンみたいです^ ^)、最近ファーストしか持っていなかったのが、改めて聴いて凄いと思い聴きたくなったキング・クリムゾンの『ポセイドンのめざめ』『アイランド』を借りましたよ。