【ARTIST INDEX】アーティスト名記事検索はコチラ
スポンサーリンク

【リマスター盤比較!MEGADETH/全アルバムレビュー】メガデス『Risk(リスク)』

メガデス リスク 写真 ブログ用 1 音楽

トトオです。

今回は、メガデス通算8枚目の作品、『リスク』をレビューします。

 

前回記事はコチラです。

本作のポイントは、以下の通りです。

メガデスが作ったボン・ジョヴィ的名盤

『Risk(リスク)』(1999年発表)

結論

先に端的に本作の結論を述べます。

本作は、デイヴ・ムステインとマーティ・フリードマンが作ったボン・ジョヴィ的作品「メガ・ジョヴィ」とも言える作品です。

概要

プロデューサー

前作『クリプティック・ライティングス』が好評だったこともあり、今回もプロデューサーは引き続きダン・ハフです。

発表されたのは、1999年8月ですから、前作からのインターバルは2年ほどで、やや短いです。

ジミーの加入とマーティの最期

前作を最後に、10年ほど在籍したニック・メンザが抜けました。

この作品では、新たにジミー・デグラッソが参加しています。

ジミーはキャリアとしては、Y&Tが長いですね。

そう、「昨日と今日」こと「イエスタデイ・アンド・トゥデイ」です。

どちらかというと、ハードロック寄りのメタルバンドのキャリアですね。

ムステインのプロジェクトMD.45に参加した縁があり、ニックの後任として加入します。

他のメンバーは前作と同じですが、本作はマーティが参加した、最後のメガデス作品になります。

『リスク』というタイトル

この『リスク』というタイトルの裏話が面白いです。

メタリカのラーズ・ウルリッヒの、

「ムステインはもっと自分の音楽にリスクとったほうがええよ?」

と言う発言から、『リスク』と名付けられた、という逸話があります。

いや、これ当時聞いた時は、ちょっと衝撃的でしたね。ムステインが素直すぎて。

これまで、あれだけメタリカに恨み節を言い続けていたわけですから、

もし、ラーズになんか言われても、

「うっさいわボケ!俺は俺のメタルを貫くんじゃ!」

とか言いそうなのに、と思いました。

しかし今考えると、やっぱり、成功者メタリカに言われたら説得力ありますよねえ・・・。

メガデス・メタリカ年表

1997/6 Cryptic Writings (MEGADETH)
1997/11 Reload (METALLICA)
1999/8 Risk (MEGADETH)

メタリカは、『リロード』を97年11月に出しましたが、その後は2003年6月まで空いてしまいます。

このメタリカの空白の期間に、メガデスは本作ともう一作発表することになります。

オリジナル盤・2004年リマスター盤 比較

ジャケット

オリジナルのジャケットはこんな感じです。

メガデス リスク 写真 ブログ用 2

これまでと比べると、劇的なイメチェンですね。ロゴも完全に変わりました。

これならカフェとかで「Now Playing」みたいにディスプレイしても違和感なさそうです。

マスコットのラトルヘッド君もいません。

リマスターは、このオリジナルから驚くほどデザインが変わりました。

メガデス リスク 写真 ブログ用 3

こちらはいかついロゴが復活し、ラトルヘッド君も顔を見せています。
(わかります?)

音質

本作は1999年に発表されたにも関わらず、わずか5年後の2004年にリミックス・リマスターされています。

これまでのレビューでも記載した通り、メガデス作品のリマスターは、作品毎で評価が分かれます。

結論から言うと、本作はオリジナルの方が良いです。

但し、元々アレンジが多様な作品のため、リマスターでさらにアレンジを加えても、それほど大きな違いはないのかな、とも思います。
(前作は酷い改悪だったので)

収録曲比較

1999年国内盤ボーナストラック

『Duke Nukem Theme』一曲が、当時の国内盤ボーナスでした。

2004年リマスター盤特典

ボーナストラックが、三曲収録されています。

全曲レビュー

#1 インソムニア – Insomnia – 4:34

シングルカットされた一曲目から、度肝を抜かれます。

ゴリゴリのSEから始まり、加工されたディストーションのギターリフが炸裂します。

ド頭からムステインが歌いまくります。

オーケストレーションに、ボーカルサンプリングまで混ざって、メガデス版インダストリアル『ボヘミアン・ラプソディ』とでも言いましょうか。

しかし、やはりニックの抜けた穴は大きいです。

ジミーは素晴らしいプレイヤーですが、ドラミングの存在感ではニックが勝ります。

リマスターは中途半端にいじられていて、格好良さが削がれています。

#2 プリンス・オブ・ダークネス – Prince of Darkness – 6:25

二曲目ですが、イントロ(?)がやたら長い曲です。

キャッチーな歌に加えて、全体的にギターリフ抑え目の本作の中では、格好良いリフが目立つ曲です。

しかし、この曲をここに配置したことで、前半の流れが悪くなっています。

このあたり、ある意味実験的でもあり、あえてリスクを取ったのかもしれません。

#3 エンター・ジ・アリーナ – Enter the Arena – 0:52

#4 クラッシュ・エム – Crush ‘Em – 4:57

四曲目の『クラッシュ・エム』は、のちにNFLやプロレスのテーマソングになった楽曲です。

本作の一つ目のシングルカットになりました。

その前の三曲目には、前奏曲のような『エンター・ジ・アリーナ』がくっついています。

これはライブのオープニングSEの定番になりましたね。

この二曲だけ聴くと、スラッシュメタル四天王の肩書きからは想像できない、ポップメタルとでも言える、ノリの良い楽曲です。

デイヴィッド・エレフソンの、ディスコっぽいオクターブ奏法も印象的です。

#5 ブレッドライン – Breadline – 4:24

こちらもシングルカットの『ブレッドライン』です。

数あるメガデスの名曲の中でも、ボーカルメロディが最高に素晴らしい楽曲の一つです。

前作も歌が素晴らしい楽曲満載でしたが、この曲はメガデスという枠を取り払って聴いた方が、絶対良いですね。

メガデスの旧来ファン以外こそ聴くべきでしょう。

アレンジが控えめなところもハマっていて、文句の付けようがないです。

この曲の良さは、ジミーのドラムプレイあってこそという気もします。

#6 ザ・ドクター・イズ・コーリング – The Doctor Is Calling – 5:40

この辺りから中盤戦でしょうか。

ミドルテンポのアルペジオが美しい楽曲です。

思えば、『ユースアネイジア』あたりの中盤の曲は、ややメロディが弱い楽曲が多い印象でした。

本作は旧来のスタイルに縛られていないため、ストレートにメロディにこだわった曲が多いです。

そのため、ありがちなアルバム中盤の中弛みも少ないです。

#7 アイル・ビー・ゼア – I’ll Be There – 4:20

ハードロックバラードです。共にシンガロングしたくなる絶妙なサビが印象的です。

ボン・ジョヴィが、『I’ll Be There For You 2』として出しても、誰も文句言わないんじゃないでしょうか?
(言いすぎ?)

しかし、ここまでポップなメロディを書くセンスがあることに、衝撃を覚えますね。

歌詞では史上初、ムステインがファン(と家族)への感謝を込めたと言われています。

#8 ワンダーラスト – Wanderlust – 5:22

個人的には、『ブレッドライン』に次ぐお気に入りの楽曲です。

語りと歌が交互に入る展開ですが、サビでの歌唱力は凄まじく、ボーカリスト・ムステインの真骨頂です。
(2000年代以降は声質が変化していきます)

イエスを彷彿とさせるアコギのアルペジオもセンス抜群です。

短い曲ですが、後半スリリングな展開になっていて、ボン・ジョヴィにマーティが加入したみたいな楽曲です(何回ボン・ジョヴィ言うねん、と)。

#9 エクスタシー – Ecstasy – 4:28

ジミーのストレートなエイトビートと、ギターのバッキングが特徴的なハードロック曲です。

これもサビのメロディが素晴らしいですね。

本作中、マーティのギターが一番泣きまくっている楽曲です。

#10 セヴン – Seven – 5:00

後半戦です。

前曲『エクスタシー』まで、メガ・ジョヴィが続いたので、ここでちょっとシフトチェンジします。

ディストーションギターをフィーチャーしたメタル曲です。

予想外に展開していく楽曲で、後半リズムチェンジしてからが真骨頂です。

ジミーの跳ねたビートから、ロカビリーばりのロックンロールに突入し、尻上がりに盛り上げて終わります。

#11 タイム:ザ・ビギニング – Time: The Beginning – 3:04

ラスト二曲は組曲です。

『ビギニング』は、アコギとムステインの歌がフィーチャーされたバラードです。

このような美しいアルペジオを据えた楽曲は、2010年代以降のキコ・ルーレイロが参加したメガデス作品でも見られます。

しかし、ここまで毒っ気がない仕上がりは、この作品ならではでしょう。

#12 タイム:ジ・エンド – Time: The End – 2:28

続く『ジ・エンド』は、ミディアムテンポのグルーヴ感を強調したメタル曲です。

しかし、かなり短く3分足らずの楽曲で、あえてこの二曲を分けた意図は分かりかねます。
(曲数を増やしたかった?)

ラストのギターソロは、マーティ最後のメガデスの公式プレイになりますが、短いながらも本当に素晴らしいメロディとフレーズです。

やはり、メガデスのリードギタリストとしては、彼が歴代ナンバーワンでしたね。

ボーナストラック(日本盤)

#13 Duke Nukem Theme – 3:54

アメリカのビデオゲームのテーマソングです。

原曲はコレです。

メガデス版はこちら。

元々のリフやメロディはオリジナルのままで、基本ほぼ完コピですが、これがビビるほど格好良く仕上がってます。

こういうメタルっぽいアレンジやらせたら世界一のバンドですね。

ボーナストラック(リマスター盤)

#13 Insomnia  (Jeff Balding mix) – 4:19

#14 Breadline (Jack Joseph Puig mix) – 4:28

#15 Crush ‘Em (Jock mix) – 5:10

リマスター盤のボーナスは、シングルカット三曲のリミックスバージョンです。

『インソムニア』はオリジナル盤のミックスですが、残り二曲はゴリゴリのリミックスです。

よほどのマニアでないと価値はないでしょう。

採点

『Risk(リスク)』/ 93点
トトオ
トトオの
オススメ名曲ランキング

1位『Breadline』
2位『Wanderlust』
3位『I’ll Be There』
4位『Prince of Darkness

リマスターお買い得度 / ☆

総評

「誰」が聴くべき作品か

冒頭に記載した通り、マーティの最終作は、メガデスが作ったボン・ジョヴィのアルバムといえるほど、過去のスタイルに縛られない、キャッチーな作品に仕上がっています。

本作はその特徴から、旧来のメガデスのファンではなく、それこそボン・ジョヴィやエアロスミスを好むような層にこそアピールすべきです。

しかし、残念ながら、新規ファンはそれほど掴めず、旧来のファンからは単に「緩い」作品にしか映らない、という結果になりました。

名曲が伝わりづらい曲順

冒頭の『インソムニア』は良い曲ですが、本作の他の楽曲と比べると明らかに浮いており、続く『プリンス・オブ・ダークネス』も二曲目の配置は微妙です。

その結果、本作のハイライトである中盤以降の楽曲の良さが、やや伝わりにくくなっているように感じます。

楽曲単位で見ると、メロディにこだわった良い曲が多いという意味では、過去最高レベルの完成度です。

黄金期の終焉

マーティは、本作で自分がメガデスでやれることを全てやり切って、満足して抜けたのではないでしょうか。

少なくとも、メンバー間の個性のぶつかり合いが作品の価値を高めたという意味では、本作がバンド史上の最高到達点だったと思います。

その後は、ムステインのワンマンバンドの色が強くなっていきます。

終わりに

本作はメガデスの黒歴史のような扱いを受けることが多いです。

確かにスラッシュメタルのメガデスはここにはいません。

しかし、スタイルに拘らずとも、楽曲のクオリティは最高レベルで、メガデスというバンドのレベルの高さを証明しています。

80年代からジュニアと作り上げてきた、メガデスというバンドは、次作で一旦の幕引きとなります。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました