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【名曲ランキング!IRON MAIDEN/全アルバムレビュー】アイアン・ メイデン『The Book of Souls(魂の書〜ザ・ブック・オブ・ソウルズ〜)』

IRON MAIDEN ザ・ブック・オブ・ソウルズ 写真 1 ブログ用 音楽

トトオです。

今回は、現時点(2020年9月)での最新作、

『The Book of Souls(魂の書〜ザ・ブック・オブ・ソウルズ〜)』

のレビューとなります。

前回記事はこちらです。

この記事は、

以下の方にオススメです。

ブルースによる過去最高のパフォーマンス
二枚組でも捨て曲なしの楽曲群
過去35年のキャリアの集大成

概要『The Book of Souls(魂の書〜ザ・ブック・オブ・ソウルズ〜)』(2015年発表)

英国チャートNo.1

2015年9月に発売された、

通算16枚目のスタジオアルバムです。

つい先日発売されたという感覚なんですが、

なんともう5年も経過しています。

前作の『ファイナル・フロンティア』からは、

約5年ぶりの作品となり、

過去最長のインターバルを更新しました。

本作はメイデンの作品としては、

五作目の英国チャートナンバーワンに輝きました。

メンバーもプロデューサーも、

2000年代から不変です。

しかし、本作は明らかに前作と違う点があります。

そうです、ブルースが大病を患ったのです。

ブルースのコンディション

本作は、ブルースが癌の治療を受ける前に、

レコーディングされたものです。

癌はこの時点で、

かなり進行していたと考えられますが、

本当に信じられないほど、超人的な歌唱力です。

本作のタイトルは

『ザ・ブック・オブ・ソウルズ』ですが、

まさにブルースの魂が、

込められているかのようです。

キャリア30年以上を最前線で歌い続けて、

本作では、病と闘いながらも、

過去最高の歌唱を見せたブルースを思うと、

聴くたび胸が熱くなります。

楽曲構成

二枚組で全11曲収録です。

全編で90分強もあります。

スティーヴ単独:1
ブルース単独 : 2
ブルース・エイドリアン : 2
エイドリアン・スティーヴ:3
デイヴ・スティーヴ:1
ヤニック・スティーヴ:2

相変わらず、

ニコを除く全メンバーが作曲しています。

注目点は、ブルースの単独曲が2曲もあることと、

三人以上の共作がゼロということです。

ブルース単独曲は、

一曲目と最終曲の二曲ですが、

本作での作曲におけるキーマンは、

間違いなくブルースです。

また、スティーブのソロ曲が少ないのは、

近しい人に不幸があったため、とのことです。

収録時間

11曲でトータル90分超えからもわかるように、

全体的に長尺曲が多いです。

4分台:1
5分台:3
6分台:2
7分台:1
8分台:1
10分台:1
13分台:1
18分台:1

6分以下の曲が半分で、

7分以上の曲が半分という感じです。

中には、なんと、

過去最長18分の超大作があります。

極端に長い曲と、比較的短い曲の構成は、

どこか『パワースレイヴ』を彷彿とさせます。
(こちらもブルースが重要な作品でした)

アルバムジャケット

原住民エディー

原住民エディーとでもいいましょうか、

どこかの部族のような格好です。
(マヤ文明のイメージらしい)

シンプルながらも力強いデザインです。

デザインは、マーク・ウィルキンソンですが、

他の作品デザインとしては、

プリーストの『ペインキラー』が有名です。

特殊パッケージ仕様

私が購入した特殊パッケージ仕様は、

本当に本のような作りになっています。

IRON MAIDEN ザ・ブック・オブ・ソウルズ 写真 2 ブログ用

なかなか豪華な仕様ではあるのですが、

大きすぎて棚に入らない・・・。
(あとディスクが取りづらい)

IRON MAIDEN ザ・ブック・オブ・ソウルズ 写真 3 ブログ用

ちなみに本作は、

久しぶりにロゴがオリジナルに戻っています。
(文字の下側の先が尖っている)

これは『Xファクター』以来とのことです。

全曲レビュー

国内盤

#1 イフ・エタニティ・シュッド・フェイル – If Eternity Should Fail (Dickinson) [8:28]

オープニングはブルース単独の曲です。

なんと、オープニングから8分超えです。

イントロの「チャララ〜」を聴いて、

日本人リスナーは、

某時代劇を思い出したはずです。

まず本作で特に注目すべき点は、

音質の生々しさ、ヘヴィさでしょう。

『ア・マター・オブ・ライフ・アンド・デス〜戦記』で、

ニコのドラムの爆音を褒めましたが、

本作も同じように、

ドラムにライブ感溢れる迫力があり、

ベースとのコンビネーションが素晴らしいです。

また、トリプルギターのトーンもシンプル且つ、

メロディ重視で、かなりとっつきやすいです。

楽曲は長尺且つ、構成もやや複雑ですが、

退屈させるところが全くないといって良いほど、

メロディが素晴らしいです。

すでに書きましたが、

ブルースの歌唱は鬼気迫るものがあります。

オープニング曲にこれを持ってきたのは、

相当チャレンジングですが、素晴らしい楽曲です。

#2 スピード・オブ・ライト – Speed of Light (Smith/Dickinson)[5:01]

エイドリアンとブルースの楽曲です。

こちらはシングルカットになります。

超意外なのですが、

この二人による楽曲は、

2000年代以降では初とのことです。
(この前の楽曲は、
 なんと『フックス・イン・ユー』

期待を裏切らない、

スピード感あふれるキャッチャーな楽曲です。

ギターのトリプルリードも、

目新しさこそないですが、

手堅い作りで文句なしです。

PVが、非常に現代的で凝っていて、

ユーモアもあって、感心しました。

『ホーリー・スモーク』のPVと、

同じバンドとは思えません。
(まだ言うか)

#3 ザ・グレイト・アンノウン – The Great Unknown (Smith/Harris) [6:37]

エイドリアンとスティーブの楽曲です。

スティーブ楽曲が、三曲目でようやく登場です。

こんなことがかつてあったでしょうか?

いかにもスティーブという感じで、

大仰で壮大な楽曲ですが、

エイドリアンのエッセンスのおかげか、

中弛みしない良いバランスです。

この曲もやはり特筆すべきは、

ブルースのボーカルです。

高音まで伸びやかに歌い上げており、

凄まじい気迫です。

この時すでに50代後半で、闘病中なんて、

曲を聴いただけでは信じられません。

サビが格好良い曲ですが、

ギターソロも素晴らしいです。
(デイヴとエイドリアンがメインのようです)

#4 ザ・レッド・アンド・ザ・ブラック – The Red and the Black (Harris) [13:33]

スティーブ単独曲ですが、

本アルバム中二番目に長く、なんと13分超えです。
(これより長い曲があるのがまた凄い)

グルーヴ感重視の曲で、

ニコのドラムパターンが派手で格好良いです。

「オオーオオオー」と、

『ヘヴン・キャン・ウェイト』的な、

シンガロングパートもあります。

超大作ですが、

中間パートのメロディも無駄がなく、

曲のつぎはぎ感も感じさせず、

非常に完成度の高い楽曲です。

本作はギターソロが格好良い曲が多いですが、

この楽曲のギターソロも珠玉の一品です。

#5 ホエン・ザ・リヴァー・ランズ・ディープ – When the River Runs Deep (Smith/Harris) [5:52]

エイドリアンとスティーブの楽曲です。

冒頭のリフが、

今までのメイデンにはないタイプで新鮮です。

どこかオリエンタルな雰囲気を感じます。

この曲は一転して5分ほどですが、

かなり数多くのエッセンスが詰め込まれていて、

それほど短く感じさせません。

この曲もサビが格好良く、

コーラスとのハーモニーが素敵です。

#6 魂の書〜ザ・ブック・オブ・ソウルズ〜 – The Book of Souls (Gers/Harris)[10:31]

本アルバムのタイトルトラックで、

ヤニックとスティーブの楽曲です。

マヤ文明に関する歌詞で、

壮大な叙事詩になっています。

ここ数作お馴染み、

必殺ヤニックアコギアレンジです。

こういうコンセプトアルバム(っぽい作り)で、

プログレッシブな雰囲気の作品には、

ぴったりの渋いアコギですね。

ミディアムテンポで、

やや重たいグルーヴ感のリフですが、

歌メロがキャッチーで、

それをなぞるギターも流麗で印象的です。

この曲も中だるみせず、

素晴らしいメロディラインで

最後まで走り抜けます。

この曲で一枚目終了ですが、

かつてこれほど、

無駄なく完璧な作品があったでしょうか?

密度が濃すぎるため、

聴き手が疲れてしまいそうに思いますが、

本作は不思議とリラックスして楽しめます。

『戦記』とはその辺りも、

似ているようで異なります。

#7 デス・オア・グローリー – Death or Glory (Smith/Dickinson) [5:12]

ここから二枚目が始まります。

通常、こういう中間の仕切り直しは、

ヤニック疾走曲が入ることが多く、

割と辛めのコメントばかり入れてきましたが、

本作は一味違います。

そう、エイドリアンとブルースの楽曲なんです。
(ヤニックファンすいません)

『スピード・オブ・ライト』で書きましたが、

この組み合わせは数十年ぶりです。

個性的な曲ではないですが、

アルバムの折り返しにはぴったりの、

キャッチー且つグルーヴィーな一曲です。

#8 シャドウズ・オブ・ザ・ヴァレー – Shadows of the Valley (Gers/Harris)[7:32]

ヤニックとスティーブによる、

本作二回目のコラボです。

イントロのギターメロが、

まるで『ウェイステッド・イヤーズ』ですが、

開放弦含むピロピロフレーズは、

どうやってもあの曲っぽく聴こえてしまいますね。

この曲もサビが良いですし、

リフも格好良いのですが、

本アルバムは本当に良い曲ばかりなので、

それと比較すると少しだけ落ちるかな、

という印象です。

#9 ティアーズ・オブ・ア・クラウン – Tears of a Clown (Smith/Harris) [4:58]

エイドリアンとスティーブによる楽曲です。

本アルバム最短の曲で、5分弱しかありません。

本楽曲は、

ロビン・ウィリアムズについて、

書かれたと言われています。
(余談ですが、 彼の映画なら
 『グッド・ウィル・ハンティング』が好きです)

本アルバムから一曲だけ選ぶなら、

私はこれを選びます。

いわゆる定番のメイデン的なリフの楽曲ではなく、

ストレート且つ、

グルーヴ感のあるロック調の曲ですが、

これほどシンプルで格好良い曲は、

メイデンの歴史でも珍しいと思います。

特に、サビのメロディは秀逸で、

本作で一番耳に残ります。

地味な楽曲に聴こえる危険性があり、

曲順的にも流してしまわれそうですが、

本作品の一番の聴きどころです。

#10 ザ・マン・オブ・ソロウズ – The Man of Sorrows (Murray/Harris)[6:27]

来ました。我らがデイヴ曲です。

例の如く、スティーブと共作です。

ちなみに、このタイトルを聴くと、

かつてのブルースの、

素晴らしいソロバラード曲を思い出します。

それはさておき、

本編オーラス前の一曲としては、

その役目を完璧に果たしている楽曲です。

本アルバムでも、

もっともメロウなグルーヴ感のある楽曲で、

アルバム後半にあると、

非常に良いアクセントになっています。

やはり、デイヴ曲はギターソロが良いですねー。

曲の終わりに、強めのリヴァーブがかかっていて、

やや引っ張る感じで終わるのも、

ラストへうまく繋げるアレンジです。

#11 エンパイア・オブ・ザ・クラウズ – Empire of the Clouds (Dickinson)[18:05]

本作品最終曲、

つまり現時点(2020年)でメイデンが公式に発表した

一番最後の曲となります。

ブルース単独曲で、なんと18分超えです。

もちろんメイデン史上最長の楽曲です。

『バーチャル・イレヴン』以来、

スティーブが関わっていない曲が

初めてラストに収録されたとのことです。

つまり、この曲以来です。
(ちなみに、ブレイズとヤニックの作曲)

いや、これ結構良い曲でしたよね。

それはさておき、

この楽曲もシングルカットになりました。
(レコード・ストア・デイのLPですが)

組曲のような重厚な作りの楽曲です。

歌詞は、1900年代前半にあった、

イギリスの飛行船の事故に纏わるもので、

物語のような作りになっています。

イントロのピアノが美しいですが、

なんとこのピアノは、

ブルースが弾いているそうです。

ブルースがピアノを使って曲の基礎を作り、

それにメンバーが合わせる形で、

楽曲を作り上げたそうです。

ミディアムテンポの楽曲で、

ブルースが朗々と歌いながら、

楽曲を少しずつ盛り上げます。

これだけ長時間の楽曲でも、

退屈させず聴かせるのは、

本作のライブ感たっぷりの、

迫力あるプロダクションと、

熟練された演奏力の賜物でしょう。

やはり同じブルース楽曲である

『パワースレイヴ』と比較されそうですが、

当時のメイデンには出せなかったであろう、

なんとも言えぬ哀愁に溢れる、叙情的な楽曲です。

採点 / オススメ名曲ランキング

『The Book of Souls(魂の書〜ザ・ブック・オブ・ソウルズ〜)』 /96点
トトオのオススメ名曲ランキング
トトオの
オススメ名曲
ランキング

1位『Tears of a Clown』
2位『Empire of the Clouds』
3位『The Great Unknown』
4位『If Eternity Should Fail』

総括

本作は、『魔力の刻印』『第七の予言』など、

クラシックなメイデンの名作に比肩する、

2000年代以降の最高傑作だと思います。

2000年代以降では、

『戦記』という傑作もありますが、

メロディの充実度と、

演奏のクオリティ(特にブルース)を考えると、

こちらに軍配が上がるように思います。

終わりに

本作は、発売当時、

かなり好意的に受け入れられた

という印象があります。

ブルースの闘病も一因でしょうが、

作品のクオリティが圧倒的だったことが、

最大の要因でしょう。

80年代までの名作にあった、

スピード感あふれる楽曲が本作にはないため、

2000年代以降のメイデンにハマらなかった人には、

やはり楽しめない可能性は高いです。

しかし、現在のメイデンだからこそ作りうる、

最高の作品が本作です。

逆に言うと、80年代当時のメイデンには、

この作品を作ることができなかったでしょう。

キャリア30年以上経っても、

このように進化し続ける姿勢こそが、

彼らがメタル界の王者であり続ける理由でしょう。

もうこの作品から5年も経過してしまい、

更に今はコロナでこの状況です。

次の作品を彼らに期待するのは、

難しいのかもしれませんが、

また彼らの最新作を聴きたい、

そう思わせてくれる稀有な大御所バンドです。

まずは、

来るべきライブに備えることとしましょう。

オリジナルアルバムのレビューは、

これでようやく終了です。

16本ものレビューにお付き合いいただき、

ありがとうございました。

【おまけコラム/メイデンと私⑯】僥倖

『ブレイヴ・ニュー・ワールド』ツアーで、

すぐ目の前で、エイドリアンが

『ザ・ウィッカーマン』を弾き始めました。

それからのライブの素晴らしさは、

筆舌に尽くしがたいものがあります。

自分自身まだ20歳ほどでしたし、

当時のメイデンは、第二の黄金期の幕開け、

という最高のコンディションです。

私の人生で、

これほど感動したライブはほかにありません。

当時一番好きだったバンドが、

アイアン・メイデンで、

その後さらに20年経っても、

ナンバーワンはメイデンです。

自分にメイデンとの出会いがあったことは、

人生で最もラッキーなことの一つでした。

2020年のライブは、

チケットが取れたにも関わらず、

コロナの影響で延期になってしまいました。

次の予定は、2022年頃とのことですが、

その日が必ず来ると信じて、

コロナ後の世界の、一番の楽しみにしておきます。

 

コメント

  1. ぼく、ブースカれす より:

    このアルバムは聴くと、個人的には『SENJUTSU / 戦術』以上に好きだったりします
    確かに一曲目の『イフ・エタニティ・シュッド・フェイル / If Eternity Should Fail』(こうした長い原題は簡潔な邦題が復活をして欲しい個人的な願いがあります😅)のイントロ、BSで元祖の『必殺仕掛人』を毎日録画して観ているので、「これからメイデンのメンバー達が極悪人達を仕置に行くのかな?」と思えてしまいます😊

    • トトオ より:

      >ぼく、ブースカれすさん
      『ブック・オブ・ソウルズ』は、傑作だと思いますね。メイデンというベテランバンドの「味」が全部入ってます。
      必殺仕事人的なメロディは、よっぽど『戦術』に入ってそうな感じなんですが(笑)

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