トトオです。
日本のロック史において、後にも先にも彼らのようなバンドはない、と断言できる唯一無二のバンド、それがニューエスト・モデルです。
今回から、彼らが残した作品を、時系列でレビューしていきます。
第一回目は、ファーストアルバムの再編集盤『ソリッド・ファンデーション』です。
以前書いたニューエストの記事はこちら。
この記事のポイントはこちらです。
日本ロック史上最強バンド爆誕!
ニューエスト・モデルと中川敬
秒で知る「ニューエスト・モデル」
1985年に大阪でボーカルの中川敬によって結成されたバンドです。
モッズやパンクからキャリアはスタートしましたが、様々な音楽をどん欲に吸収し、唯一無二のミクスチャーロックバンドとして活躍しました。
1993年には、レーベルメイトのメスカリン・ドライブと統合し、ソウル・フラワー・ユニオンというバンドに進化して、今に至ります。
KING KONGと中川敬
今回紹介するような古い音源は、大阪アメリカ村にあるKING KONGで、20年以上も前に私は買いました。
(今の中古の値段をAmazonで見て衝撃)
そもそもボーカルの中川さんは、若い時にKING KONGでバイトしていたそうです。
そのせいもあってか(?)他所で見かけないニューエストの音源も、ここなら見つけられることが多かったです。
(最近はどうなっているか知りません)
NEWEST MODEL 『SOLID FOUNDATION』(1988年)
概要
元々は『センスレス・チャター・センスレス・フィスツ』というタイトルのデビューアルバムでしたが、再発に伴いタイトルが変わりました。
また再発の際には、他に発表されていた四つのEPもくっつけられて、五枚のEPをまとめた作品となっています。
荒削りでも光まくる原石
インディー時代のコンピレーションということもあり、音質はよろしくないです。音が塊になって聴こえます。
しかし、これが良い意味で、ライブでの格好良さを真空パックしており、生々しさが伝わります。
特に一発目の『SENSELESS CHATTER & SENSELESS FISTS』のイントロは、機関車が突入してきたかのような猛烈な轟音です。
(※動画はメジャーデビュー後のもの)
音質が荒いため、聴きづらい面はやはりありますが、すでに曲はキャッチーで、自然と口ずさみたくなります。
中川敬の歌詞はすでに研ぎ澄まされていて、数十年経った今聴いても心に響きます。
抽象的でありながらも、しっかりとした主張のある作詞センスは絶妙で、とても新人とは思えません。
こいつら只者じゃない感が、十分伝わってきます。
モッズサイケと番長声
特筆すべきは、中川敬のボーカルです。
誰が言い出したのか知りませんが、まさに「番長声」という表現がバチッとハマります。
この声を聴くと、音楽がどうとかいう前に、動物的なオスとしての生命力の凄まじさを感じます。
のちに雑食的に様々な音楽を吸収する彼らですが、本作ではまだモッズミュージックの影響が色濃いです。
しかしながら、奥野真哉のキーボードのおかげで、サイケデリックなエッセンスが加えられています。
そこに番長声も合わさって、独特のモッズサイケとでも言える音楽が完成しています。
このリッケンバッカーもってジャンプしている写真、死ぬほど格好良いですね。
(モロにThe Jam風)
リズム隊の進化と壁
演奏面はやはりまだ荒く、特にリズム隊はまだテクニックが高くありません。
(このバンドスタイルなら問題ないですが)
その後、バンドは劇的に音楽性を進化させていきますが、その負荷がのしかかったのがリズム隊、特にドラムだったように思います。
数年後、彼らはニューエストでできることをやりきったとし、自身の音楽を更なるステージに昇華させるため、バンドをソウル・フラワー・ユニオンに進化させます。
そして、そのソウル・フラワーにおいては、リズム隊は強化されます。
しかし、ことロックの格好良さという面で、ニューエストが未だに唯一無二なのは、あくまで本作における初期のスタイルが、最期までバンドのコアにあり続けたからではないでしょうか。
その意味において、実はニューエストというバンドの格好良さの立役者は、初期からバンドを支え続けた、ドラムのベンだったのかもしれません。
オススメ名曲ランキング
1位『SENSELESS CHATTER & SENSELESS FISTS』
2位『NUCLEAR RACE OR HUMAN RACE』
3位『SOUL TO SOUL』
終わりに
このインディー時代の音源は、メジャー後の彼らの作品を聴いた後、遡って聴きました。
もし、このアルバムを最初に聴いていたら、その後のメジャー作品まで聴こうと思ったかどうかは、正直わかりません。
それくらい、インディーならではの音質には、とっつきにくさがあります。
やはり本作は、マニア向けな作品であり、そもそもニューエストが好きな人や、当時のインディーズシーンに興味がある人以外には、なかなか伝わらないかも知れません。
2020年代のJ-ROCK(死語)好きな若者がこれ聴いたら、汗臭すぎて間違いなく敬遠するでしょう。
当然の如く、サブスクでも聴けません。
(これは本作に限らずですが)
次回は、セカンドアルバム『プリティ・ラジエーション』をレビューします。
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