トトオです。
メイデンレビュー第11弾です。
前作『X ファクター』で、
ボーカルが、
ブレイズ・ベイリーに代わりました。
それから三年後に発表された、
11枚目となる『バーチャル・イレヴン』は、
ブレイズのボーカルとしては、
二枚目であり、
そして最終作になります。
前回記事はこちらです。
この記事は、
以下の方にオススメです。
ブレイズ・ベイリーの足跡を辿りたい
概要『VIRTUAL XI(バーチャル・イレブン)』(1998年発表)
1998年発表の、11枚目のアルバムです。
既述ですが、
私は確か1996年あたりに、
メイデンのファンになったので、
私にとっては、
リアルタイムで発売された、
初めてのメイデンのアルバムでした。
メンバーは前作と同じですが、
このアルバムを最後に、
ブレイズはバンドを去ります。
前作の『Xファクター』が、
陰鬱・暗黒な世界観な上に、
ノリの良い曲もほぼ皆無で、
世間の評価も散々だったため、
今作は方向性を、
かなりチューニングしています。
楽曲構成
楽曲の作曲者の構成は、
スティーヴ・ブレイズ共作:1
スティーヴ・デイヴ共作:2
スティーヴ・ブレイズ・デイヴ共作:1
ヤニック・ブレイズ共作:1
となっています。
スティーヴの貢献が目立ちますが、
ブレイズも3曲にクレジットしています。
相変わらず、
スティーヴに信頼されていたようです。
また、前作では大貢献したヤニックですが、
本作では1曲のみ、とかなり控えめです。
そしてデイヴ。
デイヴらしいメロディ満載の曲が、
本作では2曲収録されています。
前作に疾走曲がほとんどなく、
また長い曲ばかりだったことが、
不評だったことを踏まえ、
今作は比較的早い曲が多いです。
収録時間
曲時間も考えられており、
オープニングの『Futureal』や、
3曲目『Lightning Strikes Twice』など、
3-4分くらいの曲が増えました。
やはり長尺の曲も多く、
9分台・8分台の曲もありますが、
全体的なバランスは
かなり計算された構成です。
なんと言っても、前作は一曲目が、
『Sign of the Cross』でしたからね。
(11分越え)
サウンドプロダクション
今作の最大の問題点は、
サウンドプロダクションが貧弱、
ということでしょう。
低音がペコペコで、
特にドラムがあまりにも貧相です。
その上で、
ノリの良い作品に仕上げようとした結果、
サウンドの貧弱さがさらに目立ってしまい、
チープで格好の悪い音像になっています。
10年以上前の作品である、
『魔力の刻印』の方が、
千倍くらい格好良い音です。
アルバムジャケット
ジャケットですが、
これまでに見たことがないような、
情報の多い、不思議なデザインです。
そして、エディが大変ブサイクです。
また、ハンドロゴが今作から、
マイナーチェンジしています。
これまでは、
いくつかのアルファベットは、
文字の先端を伸ばしていましたが、
今作ではそれをやめて、
先端を切り落としています。
この作品以降は、
この「切り落としロゴ」を、
しばらく使っていましたが、
現時点での最新作、
『ザ・ブック・オブ・ソウルズ』では、
古いロゴに戻しています。
本作はサッカーの要素が含まれていますが、
これはこの年にフランスで、
ワールドカップが行われたためです。
インナーの写真も、
サッカーのユニフォームを着たメンバーが、
プロサッカー選手と一緒に写っており、
トータルコンセプトも、
なにかよくわからない感じです。
それでは、全曲レビューです。
全曲レビュー
国内盤
ブレイズとスティーヴの共作です。
かなり速いです。
『Be Quick or Be Dead』を、
彷彿とさせます。
サウンドは貧弱ですが、
スティーヴのベースは、
一応バキバキなっています。
ブレイズのボーカルも、
早口言葉のようなフレーズですが、
わりとしっくりきます。
しかし、
自らの往年の名曲を、
真似しようとして、結果失敗した
という印象です。
歌詞はジャケットから連想されるような、
仮想現実についてですが、抽象的です。
二曲目が問題のスティーヴ曲です。
オルガンのようなキーボードを、
全編でフューチャーした珍しい一曲です。
軽快なノリで、
大きな展開もなく延々と続く、
メイデンらしくない変わった曲です。
シングルカットされていましたが、
歌詞がギャンブルにまつわるものなので、
PVもそのイメージに準じたものです。
1998年当時としても安っぽい感じのCGで、
正直、微妙な仕上がりです。
この曲の問題点は、
とにかく長いと言うことです。
ダラダラと10分弱も曲が続きます。
個人的には、こういうのも結構好きで、
リラックスして楽しめますが、
やはり普通のリスナーには退屈でしょう。
お待たせしました、デイヴ曲です。
(スティーヴと共作)
これぞデイヴ曲という感じの、
ギターのメロディセンスです。
サビをギターでなぞるような、
カラオケっぽい曲ですが、
ギターソロはこれでもかと、
弾きまくっており、
二人のギタリストの異なるスタイルを、
存分に楽しめる一曲です。
中盤のギターのツインリードも格好良く、
なかなか良い曲ですが、
とにかくグルーヴ感がほとんどないのが、
惜しまれます。
ギターメインの曲のため、
もともと低音が弱いこの作品の中でも、
最も音が貧弱に感じます。
スティーヴ単独曲です。
このアルバムで一番良い曲です。
未だにライブでも演奏される一曲で、
ブルースが歌ったライブ版も、
他の作品で聴けます。
『Fear of the Dark』のような、
静と動のコントラストが見事です。
ブレイズの歌も決して悪くなく、
音質が悪くとも、
曲の素晴らしさは輝いています。
中間のギターのメロディが素晴らしく、
他のメイデンの名曲のラインナップに、
見劣りしない出来です。
歌詞はいかにもスティーヴが好きそうな、
民族と歴史に関わるものです。
今作、二回目登場のデイヴ曲です。
ブレイズとスティーヴとの共作です。
イントロのギターのエフェクトや、
キーボードでのオーケストレーションが、
当時のメイデンの作品の中では、
かなり厚化粧と言えるでしょう。
サビが印象的な曲ですが、
曲毎のメリハリが薄かった、
前作の反省点を踏まえたような曲調です。
途中のギターのメロディも格好良く、
このアルバムの隠れ名曲と言えます。
スティーヴ単独曲です。
陰鬱なイントロが、
前作の雰囲気を引きずっています。
途中から突然、やや無理矢理に、
ディストーションサウンドに、
切り替わります。
この曲も歌メロが良いです。
しかし、本アルバム中、
最もブレイズの歌唱が、
ハマっていない曲です。
これをブルースが歌ったら、
かなり違っていたと思います。
歌詞に関しても、
前作にあったような自戒的なもので、
前作に収録されていても、
おかしくない曲です。
これまたスティーヴ単独曲です。
シンセのアレンジが印象的な楽曲です。
これもブレイズの歌唱は、
かなりしんどそうです。
後半やや間延びした感じがあるのと、
ギターの音質の貧弱さが、
またしても露呈してしまっている点は、
ちょっともったいないですね。
ヤニックとブレイズの共作です。
このアルバムで、
唯一スティーヴが参加していない曲です。
バラード風の一曲ですが、
他の曲とは毛色が違うため、
アルバムのアクセントになっています。
ヤニックの書いたメロディでしょうか、
正直かなり格好良いです。
ブレイズの経験に基づく歌詞ですが、
そのおかげか、歌もかなりハマっています。
こういうパワーバラードっぽい曲では、
ブレイズの持ち味が活きますね。
国内盤ボーナスディスク
私の持っている日本盤は、
初回特典で、
ボーナスディスクが付いていました。
二曲入りですが、
どちらも『X ファクター』収録曲の、
ライブバージョンです。
二曲ともブレイズ所属時のライブですが、
これがかなり良いです。
ライブのため、装飾が少なく、
ヘヴィなアレンジになっており、
ツインギターの素晴らしさが目立ちます。
ブレイズの歌唱も、
ライブの方がしっくりきます。
この時期のセットリストを見ると、
『X ファクター』からはこれらの他に、
『Lord of the Flies』や
『Man on the Edge』などを
とりあげていたようですが、
その辺も是非聴いてみたいですね。
採点 / オススメ名曲ランキング
ランキング
1位『The Clansman』
2位『When Two Worlds Collide』
3位『Como Estais Amigos』
総括
良い曲も多く、
聴きどころも多い作品です。
しかし、正直なところ、
メタル界のオリジネイターである、
アイアン・メイデンの、
威厳は感じられません。
前作で受けた批判からか、
バランスを取りに行ったような作りです。
その結果、
これだったら、
ブルースが歌った方が全然良い、
という内容に仕上がっています。
『The Clansman』を中心に、
良い曲も多く、
ちゃんと(?)メイデンの作品です。
『X ファクター』の更に深化版に行かず、
妥協した結果の産物になったのは、
仕方なかったとはいえ、残念です。
但し、もし前作の方向性で、
そのまま突き進んでいた場合、
バンドはなくなっていたのかもしれません。
終わりに
ブレイズ最終作になりますが、
2000年以降の、
ブルース・エイドリアン復帰後の作品よりも、
実験的且つチャレンジングな内容でした。
ある意味、
ブルースとエイドリアンが戻ってからの作品は、
黄金の80年代と同路線であり、
冒険的なことはしなくなりました。
(その代わり、確実に高水準な作品)
ブレイズが悪いと、
世間的には思われているようですが、
ブレイズのいたメイデン は、
ブルースとエイドリアンのメイデンとは、
全く別物で、
そもそも比較は無意味だと思っています。
ブレイズはバンドを去った後、
鬱になったようで、
ルックスも激変しました。
それでも、
彼は自身のバンドで活動していましたし、
メイデンの曲も一部やっていました。
彼の存在があったからこそ、
今のメイデンがあるのは間違いないので、
彼は後ろ指さされるべきではなく、
称賛されるべきではないでしょうか。
次回は衝撃のブルース・エイドリアン復帰、
まさかのトリプルギター編成です。
【おまけコラム/メイデンと私⑪】空
『バーチャル・イレヴン』発表に伴うツアーに、
人生初ライブとして参加した私。
一曲目の『Futureal』から、
『The Angel and the Gambler』、
『Man on the Edge』など、
ブレイズ時代の曲を皮切りに始まり、
往年のメイデンのナンバーも交えた
セットリストでした。
私は当時まだ10代でしたが、
周りの客層は、
私より少し上くらいに見える人が多く、
オールスタンディングの前列の方で、
とにかくもみくちゃになりました。
このライブで印象的だったのが、
ブレイズがこの日のために
唯一覚えたであろうワード、
「ガンバー、オー、サッカー!」
をひたすら連呼していたことです。
『バーチャル・イレヴン』では、
メンバーのフットボール好きが、
前面に出ていたので、
それも関係があったのでしょうか。
最高の時間もあっという間に終わり、
メンバーがステージから去って、
呆然としていた私は、
ハッと、あることに気づきました。
「リュックが全部開いてる」
古いリュックではないので、
いくら暴れても、
勝手に開くことはないはず。
そういえば、後ろの兄ちゃんが、
「前のやつのリュックが邪魔」、
的なこと言ってたような・・・。
途中、なんか変な動きしてたような・・・。
財布はポケットに入れていたので、
貴重品は大丈夫でしたが、
リュックの中のティッシュやら、
小物やらが足元に落ちて、
リュックの中が空になっていました。
さっきまでの、最高の気分が、
一気に物悲しい気持ちになり、
帰路につきました。
私はそれ以降のライブでは、
コインロッカーを、
必ず使うようになりました。
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