トトオです。
『好きなんなんなん』、今回はスマッシング・パンプキンズ(以下スマパン)の『アドア』です。
前回の記事はこちら。
今回の記事のポイントはこちらです。
ポイント
眠気に耐え切れるか?!
結論
先に結論です。
ではいきましょう。
90年代バンドの栄枯盛衰
そこにドラマがある
90年代を代表するバンドには、ドラマティックなストーリーがつきものです。
ニルヴァーナしかり、ガンズしかり、メタリカしかり。
スマパンも同様で、90年代のどのアルバムも単なる音楽作品としてだけではなく、そこに至る過程や背景までひっくるめて知ることで、当時の価値を正しく測ることができます。
スマパン人気の「鍵」
スマパンというバンドのブレーンはビリー・コーガンです。
このバンドの魅力は、彼の才能によるところが非常に大きいです。
しかし、「人気のあるスマパン」に必要不可欠な存在が、ジミー・チェンバレンというドラマーです。
この一人のドラマーの去就が、このバンドの運命を大きく左右します。
ある意味、彼の影響が最も大きかった作品が今回紹介する『Adore』です。
The Smashing Pumpkins『Adore』(1998)
ビリーがいれば成立するバンド
前作『Mellon Collie and the Infinite Sadness』が爆売れして、スマパンのオルタナティブロックがメインストリームを完全制覇したのち、ジミーが脱退します。
そのジミーが抜けた状態のまま、製作したのが本作です。
本作では、バンドメンバーとしてのドラマーは不在です。
しかし、このアルバムに収録されているのは、まさにスマパン以外の何者でもない楽曲です。
ビリーのソロや、他のプロジェクトとは違い、本作は完璧にスマパンというバンドの作品として成立しています。
しかし、そこにジミーのドラムがありません。
本作は、文字通り、スマパンからジミーのドラムを差し引いただけの作品として、奇跡的に仕上がっています。
スマパン版『Violator』?
本作はスマパン本来の格好良いグルーヴが皆無です。
ジミーのドラミングを失ったため、これは必然ですが、他のドラマーに大きく頼ることもしていません。
打ち込みベースの曲は、デペッシュ・モードのようなダークエレクトロポップに仕上がっています。
突然の路線変更ですが、完全に自分たちのものにしており、驚きのクオリティです。
また、ドラムありの楽曲もありますが、あくまで落ち着いたアレンジにこだわっています。
その結果、ボーカルを際立たせるメロウな楽曲が多く、バンド史上最もビリーの歌声を聴かせる作品となりました。
本作はフォークとエレクトロの融合がコンセプトの様ですが、派手さがなくシンプルなアレンジは、デペッシュモードの傑作『Violator』のようです。
替えの利かない天才ドラマー
この作品だけ見ると、セールス的にそこまで悪かったわけではないですが、やはり前作の驚異的な成功のあとでは、見劣りする売上となりました。
他複合的な要因が絡み合った結果、ビリーは本作の結果をバンドの敗北と結論づけ、次作を最終作にすることを決意したようです。
次作はベースがダーシーからメリッサに交代しますが、ジミーが復活します。さらに先、2000年代以降、ジミーは復帰と脱退を繰り返します。
正直なところ、ジミー以外のドラマーも、素晴らしいプレーヤーが参加した作品はあります。
これはマイク・バーンがドラムを叩いていますが、文句なしのプレイです。
しかし、ジミー不参加の作品を聴くたびに、ジミーのドラムプレイそのものに代わるものはない、という事実に打ちのめされます。
イハという、その存在
2000年代、バンド復活後の『Zeitgeist』には、ジミーはいてもジェームス・イハがいませんでした。
この『Zeitgeist』は、アルバムテーマの影響もありますが、怒りと躁で全編走りきっており、ある種イハの不在を痛感させる内容でした。
つまり、大衆がスマパンに求める最大公約数的な魅力には、ビリー・ジミー・イハという三人のケミストリーが必須だということです。
ジミーのようなわかりやすさこそありませんが、スマパンの魅力のコアの部分は、間違いなくイハの存在に依るところも大きいです。
(但し本作では作曲参加はなし)
君たちはどう聴き通すか
実は、スマパンの数ある作品の中でも、一番聴いたのが本作です。
本作の落ち着いた穏やかな作風は、横になって寝る前に聴くのが最適で、とてもリラックスできます。
しかし、横になって目を瞑って聴いていると、ほぼ間違いなく前半数曲で寝落ちしてしまいます。
本作は後半も良い曲が多いのですが、集中して聴き通すのは結構難度が高く、寝苦しい時にはオススメです。
(本当に眠くなります)
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オススメ
ランキング
1位『For Martha』
2位『Ava Adore』
3位『To Sheila』
終わりに
紆余曲折ありながら、現在はビリー・ジミー・イハ三人が揃っています。
この体制になってからのわずか5年ほどで、すでにフルアルバムを三枚も発表しており、非常に良好な関係が保てているようです。
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