トトオです。
前回は、
ソフトバレエのアルファレコード時代の三作品を、
まとめてレビューしました。
ソフトバレエは、
アルファレコードで三枚の作品を発表した後、
ビクターに移籍し、
三枚の作品を発表しました。
ビクター時代三作品が以下です。
INCUBATE
FORM
レビューに際して、
改めて上記三作品を聴き始めたのですが、
この時代は内容が異常に濃いです。
まず、『MILLION MIRRORS』を聴き込みましたが、
そもそもこの作品だけで、
前回の三作品のレビューの文字数と、
ほぼ同じ文字数書いてしまいました。
そのため、ビクター時代は、
一作ずつレビューすることにして、
その中のオススメ曲を選ぶことにします。
この記事は、以下のような方におすすめです。
天邪鬼な性格で、周りの人とは趣味嗜好が異なりがち
『MILLION MIRRORS』概要
メジャー音楽に対する徹底したアンチ姿勢
実験的な内容にも関わらず、奇跡の完成度
1992年に発表された、
四枚目のアルバムです。
アルファレコードから離れて、
ビクターにレーベルを移してからの、
一枚目になります。
前作からは一年半ほど経過しています。
メンバーは、これまで同様の3人です。
作曲のバランスですが、
藤井麻輝 : 4
森岡・藤井 共作 : 1
となり、森岡色やや強め、
と言いたいところですが、
この作品はソフトバレエ3人で作り上げた、
という感じで、
一人一人のカラーはそれほど押し出されていません。
また、共作が一曲含まれています。
また、
アルバムジャケットが怪しいです。
魔術師のようです。
ミュージシャンには到底見えません。
しかし、このアルバムには、
恐ろしくハマっています。
今作での遠藤氏のパートは、
呪文 : 30%
といった感じで、
新たな才能を開花させたようです。
アルバムのトータルコンセプトを重要視した作品で、
一曲一曲だけ抜き出して聴いても、
このアルバムの素晴らしさは、
わからないと思います。
通常、4-5分くらいの曲に、
イントロ~Aメロ〜サビまで展開を持たせ、
その一曲の中で、
カタルシスを得られるような作り方が、
一般的なポップミュージックの特徴でしょう。
今作は、そういったセオリーに拘らず、
一曲一曲ではなく、
アルバム一枚、
全体として表現しようとしているように、
感じられます。
『MILLION MIRRORS』アルバムレビュー
FRACTAL (遠藤遼一 / 森岡賢)
WHOLE THE WHOLE (遠藤遼一 / 森岡賢)
A SHEPHERD’S SON (遠藤遼一 / 森岡賢)
では、ここから内容を見ていきます。
冒頭三曲ですが、
この三曲を続けて聴くことで、
初めて見えてくる世界があります。
ここでの遠藤氏の歌唱は、
ささやくようなものや、
低く抑えたものが多く、
作品の雰囲気にとてもマッチしています。
VIETNAM (遠藤遼一 / 藤井麻輝)
続く四曲目、
『VIETNAM』は、
このアルバムの中核を担う曲です。
ノイズのようなジャギーなギターに、
ほぼ呪文のような歌声が重なります。
タイトル通り、
アジア風のSEも印象的です。
このアルバムでの藤井氏の曲は、
これまで以上に挑戦的で、
非常に取っつきにくい印象です。
しかし、
楽曲のクオリティは極めて高く、
このアルバムを、
唯一無二の作品に押し上げています。
INSTINCT? (遠藤遼一 / 森岡賢)
『INSTINCT?』から中盤戦です。
この曲は、
暗黒Bopとでもいえばいいのでしょうか。
このアルバムでは、
比較的キャッチーな方です。
コーラスが印象的ですね。
これまでの作品中であれば、
特に違和感なかったと思いますが、
このアルバムでは、やや浮いて聴こえます。
HYSTERIA(遠藤遼一 / 森岡賢 / 藤井麻輝)
『HYSTERIA』は、
初の共作曲です。
「これ共作?」というような、
派手さのない繊細な楽曲です。
しかし、
メロディに森岡氏のカラーを感じますし、
アレンジは藤井氏のものを思わせます。
一つ一つの音がとても凝っていて、
聴くたびに、
新たな発見のある曲です。
ちなみに、
『HYSTERIA』と聞くと、
DEF LEPPARDを真っ先に思い出す、
メタラーな私です。
FAIRY TALE (遠藤遼一 / 森岡賢)
『FAIRY TALE』は、
このアルバムでほぼ唯一明るい、
美しいメロディの曲です。
ベストやコンピレーションで、
この曲が入っていても、
あまり目立ちません。
しかし、このアルバムの流れで聴くと、
清々しい高揚感が得られます。
この曲を聴くために、
ここまでの展開があったのか、
と思わされるほどです。
MEDDLER (遠藤遼一 / 藤井麻輝)
続く、
『MEDDLER』から、
終盤戦です。
前曲から一転して、
この曲は、ほぼ呪文のような歌唱です。
カルト教団が集会でかけていても、
なんら違和感なさそうです。
Buck-Tickの今井寿氏が、
ギター参加しているようですが、
さもありなん、といった感じです。
アルバムジャケットのイメージに、
一番合うのはこの曲でしょうか。
THRESHOLD (YELLOW-MIX) (遠藤遼一 / 藤井麻輝)
THRESHOLD (WHITE-MIX) (遠藤遼一 / 藤井麻輝)
最後二曲が、
『THRESHOLD』のバージョン違いです。
ニ曲目がボーナストラックのため、
結果的にバージョン違いが、
ニ曲並んでしまったわけではありません。
10曲入ってるアルバムの、
最後の二曲が同じ曲のバージョン違いで、
並んで収録されています。
普通そんなこと考えますか?
『YELLOW-MIX』は、
へヴィなギターサウンドが特徴で、
インダストリアルメタル風です。
速いし、格好良いのに、
なぜこれを頭に持ってこないの?
と凡人は思いそうです。
しかし、繰り返し聴くと、
このアルバムではこの位置が正しい、
と思わせる説得力は、
確かにあります。
この曲は、
Raymond Wattsのプロジェクト、
PIGにも近いものを感じました。
曲が終わったと思わせた後、
やや長めのアウトロがあり、
これも面白いです。
Depeche Modeの、
『Enjoy The Silence』の、
アルバムver.もそんな感じでした。
あのアレンジ格好良いんですよね。
(PVのアウトロは、
フェードアウトしています)
『WHITE-MIX』は、
先ほどとは別アレンジで、
こちらもノリが良いですが、
歌なしのカラオケ風です。
こっちはダンスミュージックっぽい仕上がりです。
『YELLOW-MIX』とは、
ほぼ別の曲のような仕上がりです。
それどころか、
この曲単体で聴いたら、
全く別バンドと勘違いしそうです。
もしかすると、
それが彼らの狙いだったかもしれません。
オススメ曲
これで全10曲が終わりました。
このアルバムは上記のように、
構成が独特です。
一般的によく聴かれるような、
最初に勢いのある曲、
次にキャッチーな曲、
後半にバラード、
といった、
リスナーが聴き慣れた構成を、
完全に逸脱しています。
そのため、
この作品を聴き馴染むには、
それなりに時間を要します。
しかし、
その結果、なかなか飽きが来ません。
アルバム自体は、
ソフバの初心者には、
おすすめではありませんが、
音楽好きを自称する人には、
もしかしたらこのアルバムが、
まず紹介されるべきかもしれません
『VIETNAM』
『FAIRY TALE』
『THRESHOLD (YELLOW-MIX)』!
一曲ずつおすすめするのは、
このアルバムの場合適していませんが、
個人的に好きなのは、
やはりこのあたりでしょうか。
『AFTER IMAGES』もそうですが、
ソフバは、
バラードが特に素晴らしいですね。
終わりに
今回レビューを書くにあたって、
かなり聴き直しましたが、
この作品はリスナーに対して、
それなりに聴き込む事を前提として、
作られているように感じました。
これ以降の作品のレビューは、
これからまた聴き込んで書いていくので、
現時点で言い切るのは危険ですが、
この作品は彼らの最高傑作かもしれません。
(『INCUBATE』は良い曲が多いから、
さすがに断定はしませんが…)
少なくとも、
これの代わりは日本・海外見渡しても、
私は見たことがありません。
彼らの遺した、
最大の問題作であることは、
まず間違いないでしょう。
今は、この作品が出た当時とは、
世の中が大きく変わってしまいました。
音楽以外のジャンル、
ゲームやアニメ、
その他の文化に才能が分散してしまっているので、
一音楽作品に、
ここまで凝ったものは、
そうそう出てこないと思います。
音楽好きを自称する日本人なら、
彼らの残した問題作に、
一度挑戦してみるべきでしょう。
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