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【IRON MAIDEN/レビュー番外編③】メロデスバンドの溢れるメイデン愛『鋼鉄の魂~メイド・イン・トリビュート』全曲レビュー

MADE IN TRIBUTE 写真 ブログ用 音楽

トトオです。

今回は、

アイアン・メイデンレビューの番外編として、

メイデン関連作品でも、

変わり種を一枚紹介します。

『鋼鉄の魂~メイド・イン・トリビュート』

概要

タイトル通り、

アイアン・メイデンのトリビュート盤です。

しかし、このトリビュートは、

企画が風変わりです。

レーベル(トイズファクトリー)にゆかりのある

メロディック・デスメタル系バンドによる、

メイデン楽曲のカバー集になっています。

参加バンド・収録曲

参加バンド及び楽曲は以下のとおりです。

1. 撃墜王の孤独(アーク・エネミー)
2. 悪夢の最終兵器(絶滅2秒前)(デカメロン)
3. 吸血鬼伝説(セリオン)
4. 邪悪の予言者(アルマゲドン)
5. ウエステッド・イヤーズ(ノクターナル・ライツ)
6. ラスチャイルド(サディスト)
7. 明日なき戦い(ロード・ベリアル)
8. ジ・イーヴル・ザット・メン・ドゥ(ナグルファー)
9. アカシア・アヴェニュー22(ダーク・トランキュリティ)
10. モルグ街の殺人(イン・フレイムス)

この作品は、1997年に発表されています。

メイデンは当時ボーカルが、

ブレイズ・ベイリーで、落ち目の時期です。

97年時点で、すでにブレイズが参加した

メイデン作品(『Xファクター』)もありますが、

当然の如く、 一曲も選曲されていません。

また、今や大御所になった感のある、

イン・フレイムス

アーク・エネミー(今はアーチ・エネミー)は、

この時点ではまだ若手の分類であり、

彼らの初期の課外活動は、

ファンには面白いでしょう。

ジャケット

何やらかわいらしいジャケは、

なんとデレク・リッグスの書き下ろしです。

デレクは、

本家メイデンのエディーを書いた人なので、

カバーアルバムのデザインとしては、

超贅沢と言えます。

さて、それでは本編レビューです。

全曲レビュー

撃墜王の孤独(アーク・エネミー)

判定:大変よくできました

一曲目はアーチ・エネミーです。
(私は未だにアーク・エネミーが自然)

当時はまだ、

初代ボーカルのヨハン・リーヴァの時代です。

ヨハンの時期が好きだった私には、

正直嬉しいですね。

メイデンの最も人気のある曲ということもあり、

かなり勇気の要る選曲ですが、

本作品中、最もデス声がハマっており、

演奏もシャープ且つヘヴィな、

センス抜群のカバーに仕上がっています。

彼らなら、

どんなメタルバンドのカバーをさせても、

間違いなく格好良く仕上げそうですね。

ヨハン時代のアーチ・エネミーは、

底知れぬ物々しい雰囲気があり、

大好きでした。

これがなくなったから、

自分はこのバンドから離れてしまったのかな、

と、今更ちょっと思いました。

私みたいな人は、結構日本にいるようで、

こんな企画バンドもあったりします。

悪夢の最終兵器(絶滅2秒前)(デカメロン)

判定:もっとがんばりましょう

なんですか、この人たちは?

全く聴いたこともないバンドです。
(メロデスオタクは知っているかもしれませんが)

この選曲は少々無謀ではと思ったところ、

やはり、この作品で、

最も退屈な出来になっています。

大学生がコピーしているかのような、

なんの変哲もない仕上がりで、

オリジナリティのかけらもありません。

原曲の単なる劣化版です。

「わかる、お前らがメイデン好きなんはわかる。

 けど、これでお金もらったらあかんやろ?」

と心の声が出そうになります。

その後彼らが、

人気バンドになったとは聞かないので、

そりゃそうだよな、と思いました。

吸血鬼伝説(セリオン)

判定:頑張ったでしょう

ややメジャーなメロデスバンド、

セリオンの登場です。

この辺の作品が有名でしょうか。

イントロから、

ギターエフェクトをアレンジしてて面白いです。

選曲もややマニアックですが、

センスが感じられます。

しかし、歌がどうもハマっていません。

デス声ではなく、

普通に朗々と気持ち良さそうに歌っています。

正直なところ、ややクセの強いボーカルは、

味というほどでもなくて、

やはりブルースと比べてしまいます。

「演歌歌手がメタルに挑戦しました」、

といった感じで、妙にこぶしがきいています。

演奏自体はかなり上手く、

ものすごく器用な連中であることはわかりますが、

ボーカルにもうちょっと工夫があれば、

大化けしたかもしれません。

邪悪の予言者(アルマゲドン)

判定:よくできました

クリストファー・アモットのバンドです。

彼はアーチ・エネミーでも参加しているので、

本作品では二曲参加ですね。

まず、選曲が良いです。

そもそもちょっとポップなこの曲を、

デスメタルアレンジにした発想が、

かなり賢いです。

ある種正統派メタルの正常進化版のような、

すっきりとしたディストーションサウンドで、

素直に格好良いです。

ドラムがツーバスドコドコで、

やや面白みに欠けるのが惜しいです。

サビ部分にデス声のコーラスがあると、

もっと面白かったかもしれません。

ウエステッド・イヤーズ(ノクターナル・ライツ)

判定:もっとがんばりましょう

北欧の爽やかイケメン集団こと、

ノクターナル・ライツです。
(イケメンはイメージです)

彼らは元メロデスという経歴のため、

完全クリーンボーカルでのカバーです。

残念ながら、単なるコピーの域を出ていません。

演奏が軽妙で、爽やかなメタルアレンジは、

ある種独特ともいえそうですが、

原曲の持つ哀愁がかき消され、

大変薄っぺらい仕上がりが残念です。

一言で言うとB級臭がすごく、

そういうのが好きな、

マニア向けの一品ですね。

ラスチャイルド(サディスト)

判定:よくできました

バンド名が良いですよね。

自己紹介するときどういうんでしょう。

「どうも、サディストの◯◯です」

とかいうんでしょうか。

母親とか親戚には、

自分のバンドのことをどう説明するんでしょうか。

それはさておき、

やはりポール時代の曲はカバーに向いています。

なかなか格好良い出来です。

アレンジも大変よく効いており、

パンクっぽい原曲なのに、キーボードで、

ブラックメタルな雰囲気を加えています。

これはこれで思い切ったアレンジで、

大正解です。

しかし、彼らはイタリア人というのが、

ちょっと意外でした。
(陽気なお国柄じゃなかったの?)

明日なき戦い(ロード・ベリアル)

判定:もっとがんばりましょう
   (但し個人的には大好きです)

メイデン屈指の人気曲です。

冒頭の、楽器がブレイクして、

ブルースが歌い上げるところを、

デスボイスで散々喚き倒したあと、

ブラストビートをぶちかまし、

例の(ギターの)ピロピロをかぶせるという、

周りは誰も何も言わなかったのかという、

極悪なアレンジに仕上がっています。

原曲を知っている人なら、

間違いなく、心の底から笑えます。

私は、笑みがこぼれました。

CDに付属している日本語の解説(炎の平野氏)も、

かなり馬鹿にした書き方をしてて、

これも笑えました。

彼らは、この作品から何年も経ったあとで、

自分達でこのカバーを思い出して、

居酒屋とかで、笑いながら話してそうです。

「あの時のあのアレンジ大概やったよなー(笑)」

「いや、お前があれやれ言うたんやん(笑)」

みたいなことまで、勝手に想像してしまいます。

好きです、ロード・ベリアル

ジ・イーヴル・ザット・メン・ドゥ(ナグルファー)

判定:もっとがんばりましょう

なんかこのバンド名って、

力が抜けるんですよね。

この「ファー」ってところが。

それはさておき、

カバー曲の選択としては手堅いです。

演奏は、まんまコピーのようなアレンジです。
(しかし、これは本人達も寒いと感じたのか、
 途中ちょっとだけふざけてます)

ボーカルは、ツインデスボーカルとでもいうのか、

高めのデス声と、

グロウルっぽい低音デスボイスのハーモニーが、

新鮮で面白いです。

演奏をもう少し派手なアレンジにしたら、

化けたかもしれません。

これを聴いていると、

改めて原曲の格好良さに気づかされました。

アカシア・アヴェニュー22(ダーク・トランキュリティ)

判定:よくできました

ボーカルが、天使のデス声でお馴染み(?)の、

ミカエル・スタンネです。

元々かなりボーカルをフィーチャーした曲ですが、

素晴らしいデス声です。

「もしブルース・ディッキンソンが、

 デスメタルに転向したら」の、

ある種理想系と言えるかもしれません。

ギターのディストーションも、

元々細めの彼らなので(当時)、

組み合わせとしても自然です。

但し、ある種ハマりすぎてて、

面白みに欠ける面もあり、

カバーって難しいなーと、

改めて感じました。

ちなみに彼らの作品だと、

この辺が特に好きです。

モルグ街の殺人(イン・フレイムス)

判定:大変よくできました

頭はアーチ・エネミーで、

トリはイン・フレイムスです。

当時から人気が段違いなのがよくわかります。

めちゃくちゃ格好良いです。

アンダースのボーカルは、

まだまだアングラなデス声の時期で、

正直なところ、やや迫力には欠けますが、

非常にクールです。

やはり、ブルース時代の曲を、

選ばなかったのは賢いですね。

演奏はまさに、当時のイン・フレイムスの音で、

ドラムの音(特にスネア)抜けがよく、

バンドサウンドとしてそもそも格好良いです。

ギターも彼らなりの自然なアレンジで、

気をてらわず、

原曲をモダンなアレンジにしています。

これを聴くと、初期イン・フレイムスは、

正にアイアン・メイデンの亜流であるのが、

よくわかります。

私の一番好きな時のイン・フレイムスが、

ここにいます。

終わりに

今思うと、

こういった企画がそもそも成り立つのが、

良い時代だった証拠ですね。

メロディック・デスメタルが、

これから盛り上がるところで、

トイズファクトリーもブームの盛り上げに、

一役買っているわけです。

そもそも、メロデスは、

正統派メタル、それこそアイアン・メイデンから、

派生したジャンルと言えなくもないわけで、

この企画はある種、必然だったかもしれません。

これらのバンドの中で、結果的に成功したのは、

当時既に人気のあった、

イン・フレイムスとアーチ・エネミー、

あとダーク・トランキュリティくらいでしょうか。

その後、この三バンドは、

それぞれ独自の進化を果たしましたが、

彼らのルーツは、

やはりこの辺だったということです。

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