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【奇才の怪作】花輪和一『刑務所の中』レビュー

花輪和一 刑務所の中 漫画

トトオです。

私は現在アラフォーですが、

ジャンプ黄金時代には中高生でした。

しかし、なぜか高校生時代に

手塚治虫にハマってからは、

サブカル方面に興味が進んでしまい、

高校から大学までは、

青林堂などアングラな出版社の漫画ばかり、

集めていました。

今回レビューする一冊、

花輪和一の『刑務所の中』も、そんな一冊です。

花輪和一と私

花輪和一の作品は、

確か『鵺』『刑務所の中』を持っていました。

今回探しましたが、

『鵺』は処分してしまったようです。

『刑務所の中』は、

時折、引っ張り出して読みたくなる面白さで、

まだ私が所有している、

数少ない青林工藝舎の本です。

2000年に出版されましたが、

今は、講談社文庫から再発売されているようです。

花輪和一の作品は強烈なインパクトがありますが、

諸星大二郎の作品と同じコーナーに、

我が家の本棚では分類しています。

『刑務所の中』レビュー

タイトル通り、

筆者が刑務所の中にいた体験を、

漫画にしています。

この漫画の特徴は、以下三つです。

恐ろしく丁寧且つ微細な描写
刑務所の中の日常を淡々とに描く
食への凄まじい執着

恐ろしく丁寧且つ微細な描写

花輪和一は、画力が半端ではありません。

読めば読むほど、凄まじさを感じます。

ディティールへのこだわりが異常な描き込みです。

特に凄まじいのは、いわゆる扉絵です。

刑務所の中の風景をが一枚絵で描かれていますが、

畳や壁など、

細かい部分の陰影の書き込みが微細で、

とてつもなくリアルです。

また人物の描写も上手く、

台詞とキャラクターが違和感なくマッチして、

実在しているような感覚に陥ります。

刑務所の中の日常を淡々と描く

私はエッセイ漫画が好きなのですが、

この作品は、

ある種「刑務所エッセイ」とでもいうような

唯一無二の新ジャンルを打ち立てています。

刑務所の中の、

本当に些細な出来事を淡々と描かれていますが、

この淡々とした描き方から、

刑務所の中の時間の流れを感じられます。

何か大きなことが起こるわけでもないのに、

最後まで退屈させないあたりは、

熟練の技を感じます。

食への凄まじい執着

刑務所の中という特殊な環境だけに、

必然的な部分はあるのですが、

食へのこだわりが凄まじいです。

日々の刑務所での食事を、

日記のように毎日記しているのですが、

画力が凄まじいため、

ある種写真よりもリアルに感じられます。

たいしたごちそうなわけでもないのに、

本当に美味そうに見えるのが不思議です。

この作品を読むと、

自分も刑務所に入っているかのような、

没入感が得られるため、

実際に刑務所で食事しているような気分になり、

質素な食事まで美味しそうに見えてきます。

特に印象的なのが、免業日の集会で出される、

アルフォートとコーラです。

大の大人がこの組み合わせで至福を味わう姿に、

この作品の凄みを感じます。

終わりに

おそらく、この本を読んだ少なくない人が、

一度刑務所に入ってみたいと、

思ったのではないでしょうか。

楽しかった学生時代に戻りたいと感じる大人には、

ある種、学校のような集団生活である刑務所に、

憧憬のようなものを感じるかもしれません。

普段は触れることができない、

しかし現に存在している別世界です。

日常に疲れた時に読むと、

一瞬で別世界に連れて行かれる、

特別な一冊です。

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