【ARTIST INDEX】アーティスト名記事検索はコチラ
スポンサーリンク

【小市民の幸せ】吉本浩二『定額制夫のこづかい万歳 月額2万千円の金欠ライフ』レビュー

吉本浩二 漫画 写真 ブログ用2 漫画

トトオです。

今回は、吉本浩二

『定額制夫のこづかい万歳

 月額2万千円の金欠ライフ』を、

レビューします。

この記事は以下の方にオススメです。

エッセイ漫画好きな人
おこづかいが2万円程度のサラリーマン
節約生活に疲れ果てている人

エッセイ漫画を探して

私はエッセイ漫画が好きです。

桜玉吉『しあわせのかたち』が、

そもそものきっかけでした。

桜玉吉はこの『しあわせのかたち』で、

ほのぼの日常系エッセイから、

漫画家としてのキャリアをスタートさせました。
(最初はそうでもなかったですが)

途中から純文学のような攻めた創作物になり、

今は一周回って落ち着いて、

随筆みたいなエッセイ漫画になりました。

同系列の漫画家として、福満しげゆきも大好きで、

エッセイものはほぼ全て読んでいます。

そんな私が、

久しぶりに面白かったエッセイが、

今回紹介する吉本浩二先生の、

『定額制夫のこづかい万歳

 月額2万千円の金欠ライフ』です。

『定額制夫のこづかい万歳 月額2万千円の金欠ライフ』レビュー

現物よりリアルに見える描写
小市民生活の新しい描き方
金欠の主人公が羨ましく見える

現物よりリアルに見える描写

どこかで絵柄を見たことあるな、

と思いながら買いましたが、

買ってから気づきました。

『ブラック・ジャック創作秘話』

吉本先生でした。

このシリーズは読んでいたのに、

本当に買うまで気づきませんでした。

逆に言うと、気づかずに買ってしまうくらい、

この絵柄が、元々私の嗜好に、

ハマっているということでしょう。

昭和感あふれるレトロな絵柄と、

執拗な細部の書き込みに、

異常なまでのこだわりを感じます。

なんとなく雰囲気から、

『ナニワ金融道』青木裕二を思い出します。

と思ったら、そもそも吉本先生は、

青木先生とのお仕事もされていたようです。

話を本作に戻しまして、

作者やその家族を含め、登場人物は、

ある種かなりステレオタイプな描かれ方ですが、

非常に愛らしくて、見ていて楽しいです。

また、作品内に出てくる食べ物や日常品など、

驚異的に丁寧で、且つ、絶妙なデフォルメ具合で、

実際のモノよりもリアルに見えるほどです。
(特に菓子類)

このこだわりのおかげで、

複数回目の読書でも、新鮮な発見が得られます。

小市民生活の新しい描き方

タイトル通り、

「少ない小遣いで普段どう乗り切るか」という、

小市民この上ないテーマに基づいて、

ストーリーは進みます。

このテーマだけで、

ここまで話を膨らませられるということに、

衝撃を受けました。

ある種、全く何の個性もない、普通極まりない話を、

恐ろしく面白おかしく、ユーモラスに描き切ります。

こんな何の変哲もないテーマで

ここまで面白い漫画は、

なかなか見つからないでしょう。

話の着眼点が素晴らしいことと、

さらには吉本先生の精密なタッチのおかげで、

作品世界の没入度はかなり高いです。

入り口のハードルは恐ろしく低く、

読み始めると面白すぎて止まらない、

凄い漫画です。

ただ少し心配なのが、

どれくら連載を続けられるのだろう、

ということです。

テーマを最初から絞り込んでいるので、

すぐにネタ切れしてしまう気がしますが、

この点も含めて、今後の展開が楽しみです。

金欠の主人公が羨ましく見える

『ナニワ金融道』的な絵柄と書きましたが、

絵柄だけでなく、根幹にあるムードにも、

共通のものを感じます。

つまるところは、「人情」です。

本作のテーマは単なる節約生活ですが、

なぜこんなに面白いのかというと、

キャラクターみんなが魅力的だからです。

節約生活となると、

悲壮感漂う話になりそうですが、

みんなその生活を楽しんで、

その中に幸せを見出しています。

お金持ちの話を書いて、

それを羨ましがらせるのは、

簡単かもしれませんが、
(そうでもないか)

金欠で節約生活の主人公の、

ちょっとした幸せが、

すごく羨ましいのです。

ほんのささいな出来事に感動したり、

幸せを感じられるキャラクターを見ていると、

何か自分を見つめ直す、

ヒントをもらったような気がしました。

終わりに

吉本先生は45歳ですが、

やはり本作は、

氏の人生経験があってこそという感じで、

若い20代の漫画家には、

絶対に描けないでしょう。

ある種、つげ義春のストーリーを、

全く正反対の視点から描いたら、

こうなるかもしれません。
(つげ義春の作品によりますが)

本作は、現代の30代から50代くらいの男女なら、

まず間違いなく読んで損なしの、

傑作エッセイです。
(正確にはエッセイ「テイスト」か)

コロナ禍で大変な人が多い時こそ、

こういう幸せな話が、

もっと読まれるといいなと思います。

あと、これに続いて、久しぶりに

『ブラックジャック創作秘話』も読みましたが、

これがまた面白くて・・・。

所々、手塚先生が、

漫☆画太郎が描いたみたいになってて、

これ手塚先生がもし生きてたら、

さすがに怒ったんじゃないでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました