トトオです。
今回の「好きなんなん」は、ニルヴァーナの『インセスティサイド』です。
前回の記事はこちらです。
この記事のポイントはこちらです。

ポイント
ニルヴァーナの本質とは
「最高傑作はどれか?」論争
ニルヴァーナは、人気の割には作品数が少ないバンドです。
(理由はご存知の通り)
フルアルバムはわずか三枚で、
Nevermind
In Utero
のみです。
ニルヴァーナの最高傑作は、『ネバーマインド』か『イン・ユーテロ』のどちらかとされることが多いです。
最高傑作に関する私の意見は、ここでは述べません。
しかし、見逃されがちな名盤が、『ネバーマインド』と『イン・ユーテロ』の間に発表されたEP『インセスティサイド』です。
Nirvana『Incesticide』(1992)

本作の特徴3つ!
まさに「サブポップ」な楽曲
ブッチとデイヴが変えたもの
バンドの本質がわかる企画盤
最高傑作の間の作品
ニルヴァーナの最高傑作で票が割れるのは、『ネバーマインド』と『イン・ユーテロ』の作風が、あまりにも異なるからでしょう。
『ネバーマインド』は、前作の『ブリーチ』と比較すると、別バンドのようなクオリティアップを果たしました。
『イン・ユーテロ』は、楽曲は前作『ネバーマインド』の延長線上にありますが、究極にラフな音作りです。
また、元々ニルヴァーナにあった「ニヒルでもどこかファニー」なムードが、雲散霧消しています。
今回紹介する『インセスティサイド』は、『ネバーマインド』期の楽曲の単なる寄せ集めです。
しかし、ニルヴァーナというバンドの、等身大の姿がわかる好盤になっています。
リスペクト伝わるカバー曲
特徴的なのが、三曲収録されたカバーです。
彼らは自分たちが好きなバンドを強くリスペクトし、その先達のスタイルを模倣しました。
本作のカバー曲は、極力シンプルなアレンジで、元々の楽曲の良さにフォーカスした仕上がりです。
また、選曲はマニアックなものが多く、自分達のリスナーに広げたいという意図が見えます。
これらのことから、彼らが本当に自分達の好きな音楽を大切にしていたことが、痛いほどよくわかります。
残念ながら、この数年後にバンドはなくなります。
急激に成功し過ぎてしまったため、自分達の初心とのギャップに苦しんだのかもしれません。
まさに「サブ・ポップ」な楽曲
本作には、アルバム未収録のオリジナル曲も多数収録されています。
中でも『Aneurysm』は、ニルヴァーナの全楽曲中でも、トップの格好良さです。
「トリオ編成でいかに格好良く仕上げるか」という、彼らのアレンジには舌を巻きます。
激しい展開にも埋もれないキャッチーなメロディーは、やはり天才的です。
『Hairspray Queen』や『Aero Zeppelin』は、彼らの遊び心が伝わる初期の楽曲です。
荒削りながらも、色々なアイディアを盛り込んで、ポップな歌で仕上げるスタイルは完成されています。
『Been a Son』はオリジナルですが、カバー曲と酷似しています。
シンプルでも病みつきになるキャッチーなサビが、耳を離れません。
どの曲にも共通しているのは、楽曲のポップさです。
彼らはSUB POPというレーベルからデビューしましたが、まさに名は体を表していたわけです。
ブッチとデイヴが変えたもの
本作には、88年から91年に録音された楽曲が収録されています。
ここで注目したいのが、ブッチ・ヴィグがプロデュースした楽曲と、デイヴ・グロール加入後の楽曲です。
ブッチ・ヴィグ プロデュース
ブッチがプロデュースしたのは、本作ではこの一曲のみです。
(ドラムはチャド・チャニング)
ブッチは『ネバーマインド』のプロデューサーであり、同作を究極にポップに仕上げた才人です。
この曲における、キャッチーなボーカルや、シンプルで迫力のあるサウンド作りはさすがです。
しかし、インディー臭は多分に残されています。
もし『ネバーマインド』に収録されていたら、違和感があったでしょう。
デイヴ・グロール 加入後
Turnaround
Molly’s Lips
Son of a Gun
(New Wave) Polly
Aneurysm
これらは、すべてドラムがデイヴ・グロールになってからの収録です。
どれもラジオ向けのセッションで、プロデューサーはブッチではありません。
前任のチャドと比較して、デイヴのシャープなドラムプレイは圧倒的です。
しかし、どれもラフな音質で、『ネバーマインド』のような、整合性の高い作りとは一線を画します。
ここからわかることは、
ブッチがプロデュースした
この二つの条件が両方揃うことで初めて、『ネバーマインド』はあの作品になったということです。
もし、デイヴとブッチのどちらかが欠けていたら、どのようになっていたでしょうか?
私の想像では、アメリカオルタナの中堅バンドとして、ニルヴァーナは今でも活動していたと思います。
終わりに
ニルヴァーナは、あまりにも取り巻く情報が多すぎて、その音楽だけを楽しむことが難しい面があります。
好きな音楽をただ自分達でやりたい、そんな気持ちが伝わる本作は、彼らの本質を最も端的に表しているように感じます。
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