トトオです。
今回のオールタイムベストはリンプ・ビズキットの『チョコレート・スターフィッシュ・アンド・ザ・ホットドッグ・フレイヴァード・ウォーター』です。
前回の記事はこちら。
今回の記事のポイントはこちらです。
ポイント
この時代を体験できた喜び
結論
では、先に本作の結論を述べます。
では、レビュー行きましょう。
青春時代の真ん中は
2000年夏、Nu Metal
本作発表当時、2000年の夏、まだ学生だった私は、ヘヴィ・ロックブームにどっぷりハマっていました。
まだ当時は元気だった個人経営のレコード屋さんでは、レイジ、Korn、リンプなどのいわゆるラウドロック・ニューメタル系のコーナーが売り場の中心にあって、よく売れていました。
ラップメタルの衝撃
ラウドロック系のバンドの最大の特徴は、やはりラップです。
とにかく、旧来のメタル勢と比較して圧倒的にクールに感じました。音だけではなく、ルックスやスタイルも格好良く、その音楽を聴くこと自体が一つのファッションのようになっていました。
そのトレンドのど真ん中にいたのが、リンプ・ビズキットでした。
俺はイケてるB-Boy
99年、リンプのセカンド『シグニフィカント・アザー』にどハマりしました。
まずジャケットがメタルのものとは思えないそれで、強烈なインパクトでした。
普段は周りからは白い目で見られるメタラーでも(被害妄想)、これを手にしただけで、「俺はイケてる」とぼんやりと思うことができました。
ブートのライブビデオにまで手を出し、気分はB-Boy(死語)です。
そんななか、売れまくったこのセカンドに続くサードアルバムが、ついに発売されることになりました。
Limp Bizkit『Chocolate Starfish and the Hot Dog Flavored Water』(2000)
サルでもわかる格好良さ
本作の最大の特徴は、そのわかりやすさです。
とにかく、メタルとラップの組み合わせで、これ以上わかりやすく楽しみやすい作品は、まあお目にかかりません。
ポイントはメタル度が高いところでしょう。
ラップメタルバンドは、どちらかというとパンクエッセンス濃いめのバンドが多い印象です。
リンプはギタリストの特性もあってか、セカンドからサードで完全にメタル側に舵を切っていて、その結果、モダンで完成度の高いサウンドに仕上がっています。
スタイルとしては、フェイス・ノー・モアのモダンメタル版、というのが一番しっくりきます。
何言うてるかわからなくても
本作が非英語圏でも広く受け入れられる理由は、クールなそのボーカルスタイルによるところが大きいでしょう。
そもそも、英語ラップをネイティブ同様に完全理解することは、基本的に日本人には不可能です。
つまるところ、何を歌っていても、大半の日本人には気にならないはずです。
結果、そのスタイル・声・パフォーマンスが重要になるわけですが、フレッド・ダーストという稀代のフロントマンのそのキャラクターは、日本人にも十二分に格好良く感じられます。
フレッドはファーストでは、明らかにKornのジョナサン・デイヴィスの影響が大きい、感傷的なボーカルスタイルでした。
セカンドから本作に至るまでで、いわゆるラッパー的で居丈高なスタイルに完全に移行し、メジャーシーンのど真ん中で勝負しています。
彼はやはりマイク・パットンの影響を強く受けたようですが、パットンフォロワーの中でも、最大の成功者の一人でしょう。
新時代のギターヒーロー
バンドの人気のもう一翼を担うのは、ギターのウェス・ボーランドです。
既述のとおり、パンク(もしくはスカ系)のラップメタルバンドと彼らが一線を画する理由の一つは、ウェスのディストーションギターです。
ギターだけ取り出して聴くとわかりやすいですが、縦ノリバンドとは思えぬタイト且つ正確なプレイです。
また、メンバーにDJがいるにも関わらず、SEは比較的抑えめで、ギターのエフェクトで多彩なアレンジを加えます。
クールなリフと、メロウなエフェクトによるアルペジオのギターコンビネーションは、一つの時代を作りあげたと言えるもので、同時代のギターヒーローと呼ぶにふさわしい人物です。
ジャズ畑から来た異才ドラマー
インパクトの強いボーカルとギター以外にも、実はもう一人重要人物がいて、それがドラムのジョン・オットーです。
映像を見ると一目瞭然ですが、メタルドラマーとしては珍しくかなり小柄です。
これが逆に彼のドラムスタイルの印象を強烈にしています。
このバンドのファンキーなグルーヴは、彼の天才的なリズム感のおかげです。
スネアとバスドラのコンビネーションだけで、これだけ格好良く跳ねたグルーヴが刻めるドラマーは希少です。
キャリアが異色で、元々はジャズ畑にいたようですが、このパターンはスマパンのジミー・チェンバレンと同様です。
のちに彼が一時脱退した時期は、明らかにバンドのグルーヴが弱体化してしまいました。
今更問う『M:I-2』曲収録の賛否
本作発表当時の最大の目玉は、ミッション:インポッシブル2のテーマソング『Take a Look Around』の収録でした。
実際、この曲目当てに作品を買った人も大勢いたはずです。
アルバム中10曲目に配置され、この作品のハイライトになりますが、この曲が収録されたことで、作品トータルのバランスが崩れているように感じます。(個人の見解です)
本作は中盤から後半にかけて、彼らの真骨頂とも言える、実験的で凝った楽曲が多いのですが、この曲のために、それらの曲が薄まっているように感じてしまいます。
オリジナルには収録せず、サントラにだけ曲提供という手段もあったはずです。
しかし、この曲抜きにこの時代のリンプを語るのも難しいこともまた事実で、どちらでも正解だったのかもしれません。
忍び寄るニューヒーロー
当時、世界の頂点を取ったリンプですが、その次のスターがすでに頭角を表していました。
それが、まだデビューしたばかりのスリップ・ノットです。日本の誌面でも、新人としては異例の扱いで特集されていました。
そのインパクトたるや凄まじく、圧倒的な人気をデビューからわずか数年で獲得していました。(私含む周囲のメタラーはみんなファーストを購入)
その後、数年の間にトレンドは変化し、王道のラップメタルよりも、よりマニアック且つブルータルなものが覇権を持つようになり、スリップ・ノットはモダンメタルを完全に制します。
トトオのオススメ名曲ランキング
オススメ
ランキング
1位『My Way』
2位『The One』
3位『Boiler』
終わりに
次作ではウェスが抜け、私には魅力的なバンドではなくなってしまいました。
その後、ウェス復帰した『The Unquestionable Truth (Part 1)』は実験的な作品で、ジョンが不在なこともあり、消化不良でした。
その後しばらく動きがなく心配しましたが、数年後の『ゴールド・コブラ』では旧来スタイルで完全復活し、以降はマイペースな活動を続けています。
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