トトオです。
今回はB’z対Theピーズ第三回戦、
B’z『BREAK THROUGH』対Theピーズ『マスカキザル』となります。
今回からは、先攻と後攻に分けて、二回で書きたいと思います。
ということで先攻は、B’zの三作目のフルアルバム『BREAK THROUGH』です。
前回の記事はこちらです。
今回の記事のポイントはこちらです。
俺たちの好きなB’zスタイル確立
【B’z 対 Theピーズ 三回戦/先攻】B’z『BREAK THROUGH』
結論
本作は、B’zがいわゆる売れ筋の「B’zサウンド」に進化した作品です。
初期の彼らのキャリアでは、ターニングポイントといえるでしょう。
作品背景
90年2月に発表された三作目のフルアルバムです。
前作『OFF THE LOCK』が89年5月ですから、この間9ヶ月しか空いていません。
しかし、この『OFF THE LOCK』から『BREAK THROUGH』で、彼らは劇的な進化を果たします。
まだ「売れてない」B’z
前作『OFF THE LOCK』までの二枚のアルバムは、
スタジオミュージシャンが作ったポップなハードロック
といった特徴の作品でした。
特に『OFF THE LOCK』は完成度が高く、今聴いても素晴らしいです。
しかしながら、いわゆる我々が「B’z」と聞いて想像できる個性は、この時点では確立されていませんでした。
また、セールス的にもヒットと呼べるほどでもなく、当時は相当な焦りがあったそうです。
しかし、そこで彼らは一つの糸口を見つけます。
それが、『BAD COMMUNICATION』です。
起死回生の「バッコミ」
『OFF THE LOCK』の約半年後、89年10月発売されたミニアルバムが『BAD COMMUNICATION』です。
ユーロビート調の打ち込みが強烈な曲ですが、タイトル曲の『BAD COMMUNICATION』は、なんと7分ほどあります。
この曲がきっかけとなり、B’zは本格的に売れていきます。
アレンジャーを担当した明石昌夫さんが、ご自身のYouTubeで本作の裏話を話されています。
あのフレーズはテープを切り貼りして作った
最初の音をナインスにした理由
などなど、めちゃくちゃ興味深いです。
この曲で、B’zというグループのオリジナリティが発明された、と言っても過言ではありません。
そして、この成功をステップに、『BREAK THROUGH』が発表されます。
ジャケット
おもっきり垢抜けました。
前作とは別人レベルです。
本作のデジタルビート主体の曲調に合わせた、サイバーな雰囲気が感じられる衣装です。
ロゴもやっとB’zらしくなってきました。
楽曲レビュー
軽快なデジタルビート
本作最大の特徴が、初期数作品の中では最も軽快なビートです。
これは単純に軽いというよりも、アタックは強くとも抜けの良い、爽快感に特化した軽快さです。
その後のB’zは、徐々にリズム隊が分厚くなって、ダイナミックなロックサウンドを突き詰めていきます。
この点から、実は本作の軽快なデジタルビートは過渡期的なものでした。
LADY-GO-ROUND
先行シングルは『LADY-GO-ROUND』です。
『バッコミ』の次のシングルということで、相当気合が入っていることが伝わります。
ダンザブルなビートと、稲葉節とも言える独特のフレーズが完全に確立されています。
この路線の進化系が『太陽のKomachi Angel』でしょう。
BREAK THROUGH
本作で一曲選ぶなら表題曲『BREAK THROUGH』です。
軽快且つノリの良いビートと、TAKの太いディストーションギターがギラギラしています。
転調が多い曲として知られますが、このおかげで聴き飽きない魅力があります。
歌詞も本作ならではで、若くして成功を手に入れた人間の悩みが、当時の稲葉さんと重なるようで面白いです。
吹っ切れたTAKの鮮烈トーン
テクニック的には、前作でも文句の付けようがない松本さんでしたが、今作ではかなりチャレンジングです。
前作の楽曲は、ギターリフをメインに構築されたハードロック楽曲が中心でした。
本作では、楽曲のリズムや構成が先にあって、そこにギターのキラーフレーズを挟み込むようなアプローチです。
自分たちのやりたいロックを突き詰めても良いんだという自信が、本作の吹っ切れた鮮烈なギターサウンドを生み出したようです。
BOYS IN TOWN
TAKのギターが本作で一番楽しめる楽曲です。
ディレイを効かせたテクニカルなプレイは、聴きどころ満載です。
やや青臭い切なさを描いた歌詞に、どこか寂しげな音色がハマります。
SAVE ME!?
ワウを効かせたギターと跳ねたリズムのファンキーな一曲です。
歌詞に「パープル・ヘイズ」と入っていますが、ジミヘンのフレーズもそのまま差し込んでいます。
売れ筋になってきても、自分たちはあくまでロックのリスナーに向けて作っている、という意思表示かもしれません。
天才アレンジャーの神の手
初期B’zの立役者はアレンジャーの明石さんです。
『バッコミ』で見せた手腕をここでも発揮しています。
HEY BROTHER
スラップベースがフィーチャーされたファンキーな一曲です。
80年代ヒップホップとバブルの香りが強烈で、本作でも特にチャレンジングな一曲です。
彼らはデビューアルバムでも『Fake Lips』という攻めた楽曲がありましたが、本作ではラップのレベルも段違いです。
LOVE&CHAIN
シングル『LADY-GO-ROUND』のカップリング曲です。
『バッコミ』第二弾と言えるような、キャッチー且つ派手な音作りの楽曲です。
のちにミニアルバム『MARS』で、英詞バージョンのリミックスも発表しますが、個人的には本作収録のキラキラしたキーボードフレーズが好きです。
トトオのオススメ名曲ランキング
オススメ名曲
1位『BREAK THROUGH』
2位『BOYS IN TOWN』
3位『LOVE&CHAIN』
総評
聴くたびに発見のある初期の傑作です。
本作でいわゆるB’zスタイルは確立されますが、彼らの面白いところは、このスタイルで止まらずに、その後さらに進化させていくところです。
その意味において、本作は一般的に知られるB’zというグループの「スタンダード」と言える作品でありながら、過渡期的な作品という側面も持つ、キャリア上でもユニークな一枚でしょう。
終わりに
私はまさにB’z世代ですが、この作品は意外と周りで聴かれていない印象で、大変勿体無いです。
しかし、デビュー作からここまでで、わずか一年半ほどしか経ってないというのが、信じられません。
三回戦の後攻は、Theピーズの三作目『マスカキザル』になります。
このマッチメイクには、書く前から一人心がざわついています。
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