トトオです。
前回は、2000年代復活第一弾オリジナルアルバム『The Wildhearts Must Be Destroyed』をレビューしました。
今回は、ワイルドハーツのコンピレーションアルバム『Coupled With』をレビューします。
ワイルドハーツの真価はB面曲にあり!
- 『Coupled With』(2004年発表)
- 全曲レビュー(日本盤)
- #3 Cheers (Portnoy, Angelo, James)
- #4 The People That Life Forgot
- #5 L.T.D. (Jon Poole)
- #7 6.30 Onwards
- #8 Eager to Leave ‘Er
- #11 Lake of Piss (Ginger, C.J.)
- #12 If I Decide
- #14 You Got to Get Through What You’ve Got to Go Through to Get What You Want, But You Got to Know What You Want to Get Through What You Got to Go Through (Ginger, C.J., Stidi)
- #15 Hit It On the Head (C.J.)
- #17 Return to Zero (Ginger, Steve Firth)
- #18 Action Panzer
- #20 Dancin’ (McCormack, Ginger)
- 採点
- 総括
- 終わりに
『Coupled With』(2004年発表)
概要
2004年発表のコンピレーションです。
2000年代に入り再結成されたワイルドハーツですが、フルアルバムである『The Wildhearts Must Be Destroyed』が2003年に発表されるまでに、数多くのシングルが発表されました。
そのすべてに、シングル用のB面曲が収録されており、膨大な曲数となっていました。そのほぼ全てをまとめ上げたのが、本作です。
メンバー
CJ
Andrew “Stidi” Stidolph
Jon Poole
前作『The Wildheats Must -』時点で、すでにベースのダニーは抜けていました。
本作にメンバー名はクレジットされていませんが、インナーには代役のジョン・プールが写っています。
しかしながら、本作は発表時期が違う曲の寄せ集めのため、ダニーが参加した曲も作品には含まれます。
音質
主にB面曲の寄せ集めということもあり、曲毎に音質のバラツキがあります。
過去作にも、B面曲中心の企画盤はいくつかありました。
それらは、アルバム一枚としての統一感は絶妙に仕上げられて、オリジナルアルバムを超えるレベルのものもありました。
しかしながら本作は、
この時期のB面曲を全部ただ放り込んだ
という感じで、全体の統一感はあまり重視されていません。
一種のお祭り的な作品と言えます。そのため、曲数もとんでもなく多いです(全20曲)。
まあ、本作に関しては、つべこべ言わずリラックスして楽しむのが、正解でしょう。
ジャケット
『Coupled With』というタイトルに合わせた、ユニークなジャケットです。
但し、インナーの写真や構成は雑な感じで、本作の内容と同様に、勢いで作った感じがします。
全曲レビュー(日本盤)
今回、過去レビューした楽曲は省略しています。
また、作曲者は、特記ない限りジンジャーです。
#3 Cheers (Portnoy, Angelo, James)
メロディを引用した、珍しい楽曲です。
この曲は、この時期の代表曲『Stormy in the North, Karma in the South』と双璧をなす名曲です。
引用された原曲は、テレビドラマのテーマソングです。
私はこれをきっかけにこの原曲を知りました。Bob Jamesのコンピレーションまで買いました。気に入っています。
寄せ集め企画盤である本作ですが、本作の代表曲は間違いなくこの楽曲でしょう。
#4 The People That Life Forgot
キャッチー且つシンプルな楽曲です。最初からB面用の楽曲だったのか、音もラフでチープな感じです。
B面曲にこれだけの素晴らしいメロディを持ってこれるのは、やはり才能のなせるわざです。
#5 L.T.D. (Jon Poole)
ジョン・プール単独の楽曲です。たしかにベースが動きまくります。なかなかいい曲です。
はっきり言って、ダニーよりもジョンの方が、プレイヤーとしては上手ですね。
#7 6.30 Onwards
#8 Eager to Leave ‘Er
流れるように二曲続きます。このあたりから、やや中弛みします。彼らのオリジナルアルバムは、曲順がかなり凝っているので、このあたりはB面集らしいですね。
驚くほどの速さで後半にかけて走り抜けます。現ドラムのリッチよりも、縦乗りの高速ビートが得意なステディならではでしょう。
消えた「90年代オルタナメタルの格好良さ」
2000年代の再始動ワイルドハーツは、ビジュアル面も音楽面も、パンキッシュなスタイルを強調していました。
その結果、90年代の作品には感じられた、UKのオルタナメタルバンドっぽい格好良さは消えてしまいました。
彼らのこの変化は、ニルヴァーナが終わったあとに、フー・ファイターズが始まったような変化と似ています。
フー・ファイターズは、一作目がぶっちぎりで格好良かったですね。
#11 Lake of Piss (Ginger, C.J.)
本作でも一番格好良い曲の一つが、コレです。
CJとジンジャーの共作です。AメロからBメロがいかにもCJっぽいです。CJの楽曲が好きな自分としては、いつ聴いても楽しい一曲です。
音はかなりラフですが、この曲はむしろこれくらい粗いほうが、勢いが削がれてなくて良いです。
#12 If I Decide
さすがにこのあたりから少々ダレます。本作でも一番地味な楽曲ですね。
#14 You Got to Get Through What You’ve Got to Go Through to Get What You Want, But You Got to Know What You Want to Get Through What You Got to Go Through (Ginger, C.J., Stidi)
嘘のようなタイトルの楽曲です。ジンジャー、CJ、ステディの共作になります。
ステディの高速ビートが楽しめる楽曲です。並みのバンドなら、代表曲になるようなクオリティで、もうさすがとしかいいようがないですね。
やや気になるのが、ここまでとにかく押し一辺倒で来ているところです。
90年代はアレンジが多彩で、そのあたりもバンドの格好良さでしたので、本作全体で見るとやはり少々物足りなさはあります。
#15 Hit It On the Head (C.J.)
CJファン向けのお楽しみ楽曲です。
ジンジャーの楽曲よりも、よりストレートでパンキッシュな楽曲です。この時期のバンドのカラーには、ハマっています。
#17 Return to Zero (Ginger, Steve Firth)
ジンジャーと、エンブレイスのスティーブ・ファースとの共作です。このコラボはどういう経緯だったのでしょうか?
コーラスはキャッチーでシンプルですが、ジンジャーらしいひねりはそれほどでもなく、ややパンチが弱いです。
本作中最もディストーションが効いている楽曲で、この曲だけ浮いています。(全然エンブレイスっぽくない)
エンブレイスの曲は、聴けば一発で「これは売れる!」とわかります。甘いです。
#18 Action Panzer
まさにタイトル通りの、激烈な一曲です。一筋縄でいかない展開ですが、高速ビートで一気に走り抜けます。
#20 Dancin’ (McCormack, Ginger)
ようやく本編最終曲になります。ダニーと一緒に書いた曲です。
これを最後に持ってくるのは、いかにもジンジャーらしいです。
この曲を実際に書いてから、このコンピレーションを出すまでの間に、ダニーの調子が悪くなったことを想像して聴くと、少々切ないですね。
採点
1位『Cheers』
2位『Lake of Piss』
3位『You Got to Get Through What You’ve Got to Go Through to Get What You Want, But You Got to Know What You Want to Get Through What You Got to Go Through』
総括
2000年代すぐの復活ワイルドハーツは、彼らのキャリアでも、創作活動の第二のピークだったように思います。
この後も継続的にバンドは活動しますが、これほど活動に勢いがあった時期はありません。本作はこの時期の作品を一気に楽しめる企画盤として、非常にお得な一枚です。
曲の出来や、音質にムラはありますが、ファンサービス的な作品としての価値は高いです。
終わりに
思えば、2000年代以降、ワイルドハーツがバンドとしての体をなしてきたのは、CJのおかげと言えるでしょう。2000年代からは、唯一不動のメンバーです。
2021年現在のバンドとしての安定感は、この2000年前半の彼の貢献が大きかったと、改めて思います。
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