トトオです。
今回は、ソフトバレエの2002年の復活作『SYMBIONT』をレビューします。
前回記事はコチラです。
この記事は、以下の方にオススメです。
『SYMBIONT』概要
本作は2002年の10月に発表されました。
前作の『FORM』が1995年の4月でしたので、なんと7年半も空いています。
7年半も空いた理由は、解散して、活動休止していたためです。これだけのブランクがありながら、よく再結成できたものだと、今更ながら思いますね。
本作発表直前に、『メルヘンダイバー』が先行シングルで発売されました。
ちなみに、私がソフトバレエを好きになった時期は、2000年頃でした。すでに解散して数年経っており、もう過去のバンドという感じで当時聴いていました。
そんな中、突如再結成して、さらに新作まで発表する、というニュースをリアルタイムに見ていて、大変驚いたことを覚えています。
このシングルを初めて聴いた時は、ブランクを感じさせないクオリティの高さと、吹っ切れたようなポップさが印象的でした。
メンバー
お馴染みの三人で復活しています。
ちなみに本作は個別の作曲者がクレジットされておらず、全曲ソフトバレエ名義です。
本作タイトルの『SYMBIONT』は「共生」という意味ですので、三人で一つの作品を作り上げた、という気持ちが強いのでしょう。
まあ、クレジットがなくても、だいたい誰(どちら)が書いたのかは想像がつきますが、本作はそれをあまり意識しないで聴くべき作品かもしれません。
ジャケット
彼らは元々、ビジュアル系ともいえる強烈なルックスが魅力ですが、本作のジャケットはアートっぽい洗練された感じで、モード系のファッションブランドの広告のようです。
裏面が平井堅に見えるのは、私だけでしょうか・・・。
楽曲レビュー
洗練された大人のミクスチャーロック
後期の隠れ名曲『PEACEFUL DAYS』
BIRD TIME
この一曲目を初めて聴いた時、皆さんどう思われましたでしょうか。これくらい「復活」感のある楽曲、なかなかないと思いませんか?
冒頭の遠藤遼一の雄叫び(?)が、まさに復活の喜びに満ち溢れています。楽曲は、『FORM』の延長線上にある、ライブ感あふれるロック曲です。
ちなみに私はこの曲を聴くと、ケミカルブラザーズの『Let Forever Be』を自動的に連想します。たぶんドラムですね。
私がこれまでの人生で見た中で、一番衝撃的だったPVです。
(いきなりソフバの話でなくてすいません)
JIM DOG
続く二曲目から、ミクスチャー感が強まります。生々しいロックサウンドとエレクロのバランスが良く、キャッチーさも相まって、流れるように聴けます。
BABEL
エレポップ調の軽快な一曲です。四つ打ちのドラムが気持ちよく、アレンジ次第ではハウスっぽくもなりそうです。
しかし、ここまで軽い仕上がりの楽曲は、かつてなかったのではないでしょうか。この辺りの楽曲のポップさ・軽さが、2000年代復活ソフバの最大の特徴と言えるかもしれません。
MERCHENDIVER
みんな大好き(?)『メルヘンダイバー』です。復活後のソフバといえば、コレという人が多いのではないでしょうか。
PVも言うことなしの格好良さです。
シングルとはアレンジが異なりますが、アルバム版の方が音がキラキラしていて、個人的には好きです。
歌詞にはどこか突き抜けた清々しさがあります。90年代を駆け抜けた三人だからこそ作り得た名曲でしょう。
TOO FAT TOO UGLY
中盤のここに来て、期待通りの鬱楽曲です。ダウナーな朗読調の楽曲ですが、それでもメロはあくまでキャッチーで、リズムも軽妙で聴きやすいです。
OUT
こちらも、ループするドラムやギターのサウンドが『FORM』を経過したソフトバレエをかんじますが、エレポップ要素も強く残しています。
同時代のミクスチャーロックの影響を感じますし、やはり2000年代の洗練された音です。
FINE TRAIN
本作随一の不思議な一曲で、お気に入りです。
エレクトロニカと言えるほど音が凝っていて、LFOやオウテカなどを想起します。しかしながら、独特の電子音は、あくまでポップで、とっつきやすいです。
LFOと言えば、2000年代のマーク・ベルだけで出したこのアルバムは最高ですね。
DEAD-END GAZE
もろ藤井麻輝という感じのノイジーな楽曲です。大半のソフバファンは、これが入ってないとやっぱりアルバムが締まらない、と感じるでしょう。
しかし、本作全体のポップさに引きずられたところがあるのか、ダウナーながらも妙に聴きやすいです。
関係ないけど、DEAD ENDを久しぶりに聴いたら、滅茶苦茶格好良かった・・・。
LOVE JUNK
初期のソフバっぽい、ノリの良い楽しい曲です。こういう曲調だと、遠藤遼一の進化がよくわかります。
彼のような、太く低くても、透き通るような声は、他にあまり聴いたことがないですね。
F・A・C・S
オーラス一個手前に来て、『MILLION MIRRORS』ばりのノイジー且つキレた楽曲です。
黒沢清のホラー映画を、音だけで表現したらこんな感じでしょうか。日本語歌唱はかなり実験的で、読経のような独特の発声です。
いや、これほんと怖かったですね・・・。
PEACEFUL DAYS
本編オーラスがこれです。
私は当時、この曲をそれほど聴き込んでおらず、比較的近年になり、その素晴らしさに気づきました。本作の代表曲は、『メルヘンダイバー』かこれになるでしょう。
『メルヘンダイバー』同様、歌詞の表現がソフバらしくないといえばソフバらしくなく、直接的且つ感情的です。
過去作に入ると違和感あったかもしれませんが、本作のラストには相応しい名曲です。
まとめ
一時代を走り抜いた三人だから作り得た、どこか達観した清々しい雰囲気のある作品です。
全体的にまとまりが良く、歌メロの良いキャッチーな楽曲ばかりで、何度も繰り返し聴きたくなる一作です。
90年代のソフバの作品は、今聴くとやはり時代を感じるところもあるのですが、本作は発表から20年近く経っても、未だに新しさを感じる内容で、完全に時代を超越しています。
オススメ名曲ランキング
1位 『PEACEFUL DAYS』
2位 『MERCHENDIVER』
3位 『FINE TRAIN』
終わりに
本作は最終作ではなかったものの終わりは見えた復活作であり、再結成の前向きさと独特の諦観を併せ持つ、興味深い作品でした。
但し、過去作にあった執念・怨念のような情念が薄まったのは明らかで、このあたりはファンによって賛否分かれるところでしょう。
次作が本当に最終作です。
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