トトオです。
プリーストレビュー、今回は2002年発表の『デモリッション』を紹介します。
前回の記事はコチラです。
今回の記事のポイントはコチラです。

ポイント
ティムとブレイズの相違点
過去の栄光と、今
私は『ジャギュレイター』が発表された時期に、プリーストを聴き始めました。
その後、遡って過去の名作を聴いて、彼らの凄さを理解することができました。
私が「過去プリースト」を掘り起こしている最中、「今プリースト」が新作を発表することになりました。
『Demolition』(2002年発表)
概要
プリーストがもがき苦しんでいる横で、もう一組の王者であるメイデンは、奇跡の復活を果たしました。
その後の2002年に発表されたのが、ティム加入後プリーストの二作目であり、最終作でもある『デモリッション』です。

本作の特徴3つ!
遅れてきたモダン・ヘヴィネス
メイデンとプリーストの違い
器用すぎるティムの弱み
前作ですでにその圧倒的な実力を証明していたティムですが、本作でも遺憾無くその技量を発揮しています。
前作よりもディストーションがマイルドで、ブルータル度が下がり、よりシンプルなアレンジの楽曲が増えました。
結果、ティムのボーカルの上手さがさらに引き立ちます。
本作の目玉は、オーラスに収録された『Metal Messiah』です。
ラップを前面に取り入れて、KORNに似たアレンジも入った、メタルゴッドの新境地と言えます。
アップデート版『Turbo』とでも言えそうな『Subterfuge』では、ティムが野太く吠えまくります。
ちなみにこの曲は、『A Touch of Evil』以来となる、Chris Tsangaridesとのコラボです。
ロブにはこのようなラウドな歌唱は不可能であり、これこそティムの真骨頂と言えるでしょう。
しかし、彼にしかない個性は、この作品でもまだ確立されたとは言えません。
そもそもティムは、過去の楽曲を歌いこなせる実力が評価されて採用されたはずです。
彼の個性が重要視されて、採用された可能性は低いです。
(上手さも個性と言えば個性ですが)
さらに数作重ねれば、ティムにしかない「持ち味」が備わったのでは、と想像します。
遅れてきたモダン・ヘヴィネス
前作よりもディストーションは抑えめにしながらも、グルーヴを強化し、叙情性を減らすというバランスは継続されています。
前半に顕著ですが、直線的に押す楽曲が多く、かつての様式美は排除されています。
全体的に同じトーンの、重苦しい楽曲が多いです。
プリーストのこの方向性からわかることは、
同じ土俵で勝負に挑んだ
ということです。
当時すでに、スリップノットなんかがシーンの代表格だったわけです。
彼らの主戦場はアメリカですから、こういうトレンドにも対抗できる作品を作ろう、という意欲を感じます。
新しいものを取り入れて、過去作にこだわらない精神は素晴らしく、これこそがプリースト作品の醍醐味だと感じます。
しかしながら、世間の評価は、
過去のプリーストの栄光に劣る
というものであり、セールスは惨敗でした。
メイデンとプリーストの違い
ブルースが抜けてブレイズを入れたメイデン
二つのバンドは一見似ていますが、実態は違います。
メイデンの特徴
メイデンは、ボーカルが誰であっても、音楽スタイルは不変でした。
そのため、ボーカルに不満はあっても、楽曲に対する不満は出にくい、という状況でした。
プリーストの特徴
一方のプリーストは、音楽スタイルを柔軟に変化・進化させる特徴があります。
作品ごとに作風を変えつつも、ロブの時代にメタルゴッドの地位を確立させました。
ここで重要な点は、基本的に演者は不変で、音楽スタイルを変えて進化してきた、というところです。
(※ドラムは除く)
それだけに、ロブが抜けた穴は大きかったのです。
『ペインキラー2』は作らなかった
ロブが抜けて、『ペインキラー2』みたいな作品を作れば、メイデンのような評価になったかもしれません。
しかし、彼らは相変わらず進化の道を選びました。
結果、『ジャギュレイター』や『デモリッション』という、モダン・ヘヴィネスに特化した作品を発表しました。
もし、ロブがボーカルなら、プリーストの新基軸として、それなりの評価は得たと思います。
しかし、ロブではなくティムが歌ったことで、
ゲストボーカルが歌うプロジェクト
のように聴こえてしまいました。
これはプリーストのバンドの特性上、致し方ないことであったと思います。
ティムが抜けた後は、ロブがまた戻ります。
ロブ復帰後の作品は、メタルゴッドとしてのプリースト像をマーケティングして、売れる作品を作るようになりました。
点数
オススメ名曲ランキング

オススメ
ランキング
1位『Subterfuge』
2位『Metal Messiah』
3位『Machine Man』
終わりに
プリーストは、イギリス本国の人気より、米国や日本の人気が高いのですが、なんと本作はイギリスでは国内盤が発売されませんでした。
これがきっかけになったのかはわかりませんが、ティムは本作を残してバンドを去ります。
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