トトオです。
今回は、イン・フレイムス11枚目のフルアルバム『バトルズ』をレビューします。
前作の記事はこちらです。
今回の記事のポイントはこちらです。
最高にキャッチーなイン・フレイムス
『Battles』(2016)
2016年に発表された、通算11枚目のフルアルバムです。
前作から2年強のインターバルで発表されました。
ベテランメンバー交代
本作を最後に、ベースのピーター・イワースが脱退します。
彼は、四作目の『Colony』から、約17年も在籍ました。
また、前作で叩いたドラムのダニエル・スヴェッソンは、すでに前年に脱退しています。
彼もほぼピーターと同期間の在籍で、長らくバンドを支えました。
彼のソリッドなドラムプレイが、バンドの格を上げたのは間違いないところです。
本作ではジョー・リカードがドラマーとして参加しています。
ジャケット
今作のジャケットは「スペースドクロ」とでも言える、少々風変りなものです。
注目すべき点はただ一つ、ロゴが従来のデスメタル風に戻ったことです。
前作は、スタイリッシュなロゴに変更されていましたが、不評だったのかもしれません。
売れっ子プロデューサー採用
本作最大の注目点は、プロデューサーにハワード・ベンソンを迎えたことです。
知る人ぞ知る、売れっ子プロデューサーです。
2000年前後、ゼブラヘッドやP.O.D.などのミクスチャーメタルを売りまくった人物です。
懐かしい・・・。
このプロデューサーを採用したことで、本作の方向性は確定しています。
それは、
ということです。
結果、過去最高にキャッチーなイン・フレイムスの作品が誕生しました。
楽曲レビュー
プロデューサーに託したもの
影が薄くなったリフ
2010年代最大の転換点
もはやメロデスとは言い難い
本作最大の特徴として、サビや歌が驚くほどキャッチーです。
但し、ハードロック・メタル的なボーカルとまでは行かず、ブルータルさをボーカルでギリギリ表現しています。
彼らはメロデスバンドの中でも、特にインスト隊のメロディが強力なバンドです。
そのため、ボーカルは相対的にメロディックになりすぎない傾向がありました。
しかし、本作では、歌えるデスボーカルスタイルを完全解禁しています。
結果、もはやメロデスではなくなりました。
特に驚いたのが『Here Until Forever』です。
イン・フレイムスというバンドの、過去のスタンダードからは完全に逸脱しています。
イン・フレイムスらしさこそ薄いですが、本当に素晴らしい楽曲です。
もう一つ驚いたのが、アンダースがここまで「歌える」という事実です。
ミカエル・スタンネのように、デスボイスとクリーンボーカルをはっきり分けるタイプではありません。
彼は、地声の延長線上にデスボイスがあるタイプです。
クリーンで歌ってもハスキーで渋く、デスからクリーンへの切り替わりもナチュラルです。
プロデューサーに託したもの
このような非常に思い切った変更は、やはりプロデューサーの手腕によるところが大きいでしょう。
元々、幅広い層に受け入れられる作品に特化したプロデューサーですので、当然と言えば当然です。
そして、このプロデューサーを選んだのは、バンド自身です。
子供のコーラス隊が衝撃的です。ここまでやるかという。
振り返ると、イェスパーが抜けた一作目の『Sounds of a Playground Fading』は方向性が散漫としていました。
続く『Siren Charms』は、過去のイン・フレイムスからの脱却に踏み込みました。
本作では、その方向性を大きくブーストし、決定的に生まれ変わろうという、強い信念を感じます。
影が薄くなったリフ
この方向性に進めた反動(?)がやはりあり、それはリフに出ています。
過去作と比較しても、明らかにパンチが弱くなったように感じます。
しかし、前作でもすでに同様の傾向はありました。
中途半端になるくらいなら、完全に歌に振り切って、それに合うリフに特化した、ということでしょう。
2010年代最大の転換点
本作は、2010年代の最大の転換点だと思います。
旧来のメロデスが好きなオールドファンで、この作品単体でも好きな人は少数でしょう。
そもそも、ガチのメロデスファンは、本作よりもっと前に離れていたと思います。
そのため、本作でファンを辞めたという人は、今さら多くないでしょう。
反面、本作からファンになった人は多いと思います。
少なくとも本作には、
美しいボーカルメロディとアレンジ
これらが備わっています。
この点において、彼らは前作から大きく進化しています。
総評
自由度が格段に向上
デスメタル臭は過去最低であり、やかましいという理由で遠ざけられることが、本作ではほぼなくなったはずです。
ここまで振り切った作品を作ったことで、彼らの表現の幅は劇的に広がった、と思われます。
自分達の作る楽曲であれば、それがもうイン・フレイムスである、そんな自信を身に付けたのではないでしょうか。
「らしさ」が足りない
以前も書きましたが、私は本作を聴いて、イン・フレイムスのファンに舞い戻りました。
本作は、本当に素晴らしい作品です。
但し、一点だけ足りないのは、「イン・フレイムスらしさ」でしょう。
良い作品ですが、このバンドの代表作とは言い難い、というのが正直なところです。
トトオのオススメ名曲ランキング
オススメ
ランキング
1位『Here Until Forever』
2位『The End』
3位『In My Room』
4位『The Truth』
終わりに
本作は、世間的な評価や注目度があまり高くないようです。
良い作品ですが、人を引き込むような、圧倒的な魅力には欠けるというところでしょうか。
しかし、本作がバンドにもたらした功績は大きく、その後の作品で彼らは更に進化します。
コメント