トトオです。
前回は、
1990年代のイン・フレイムスについて、
レビューしました。
今回は、
2000年代前半に彼らが発表した、
三枚の作品のレビューを行います。
この記事は、
以下のような方にオススメです。
2000年代のイン・フレイムスを聴き直したい人
私とイン・フレイムスの2000年代(前編)
前回記事で書きましたが、
私は高校生の時に、
イン・フレイムスと出会い、
夢中になりました(90年代)。
当時は、メタリカやメガデス、
アイアン・メイデンなど、
大御所メタルバンドも、
数多く聴きました。
イン・フレイムスは、
それらのバンドと比べて、
かなり新しいバンドだったこともあり、
成長する姿も見られるという意味でも、
彼らの活動を応援していました。
1999年に彼らが来日した時は、
大阪の梅田HEAT BEATまで、
一人で見に行きました。
チルドレン・オブ・ボドムと、
シナジーがゲストという、
かなり贅沢なライブでした。
(私は当時、
チルドレン・オブ・ボドムも大好きで、
1stアルバムを輸入盤で買って、
相当聴き込んでいました)
しかし、
私のイン・フレイムス熱は、
この時点が、
一番のピークだったように思います。
その後、彼らが徐々に、
音楽性を変えていくにつれて、
私の音楽の趣味も、
メタル中心から、
オルタナティヴ・ロックに移行していき、
興味が薄れていきました。
しかしそれでも、
昔の気持ちが完全に消えることはなく、
新作は買い続けていました。
2000年代前半の作品について
前回は、
1990年代に発表された、
四作品をレビューしました。
2000年代は、
計五枚の作品を発表しています。
今回はその中でも、
彼らが最も大きな路線変更をした、
2000年代前半の、
三作品をレビューします。
今回も、私のオススメランキング形式で書きます。
作品の発表年順ではないので、
ご注意ください。
過渡期中の過渡期の一枚!
第3位
まさに過渡期の一枚 / ☆☆☆
2004年発表の、通算七作目です。
前作の『Reroute to Remain』から、
メンバーの変更はありません。
前作は、
メロディック・デスメタルからの、
路線変更を初めて試みた作品でしたが、
本作は更に、同路線を一歩進んだ印象です。
(詳細は、『Reroute to Remain』で後述)
私がこれを初めて聴いた時は、
以前のメロデス路線には、
もう完全に戻る気はないのだな、
と、彼らの決意を感じました。
アルバムのジャケットデザインも、
かつての面影ゼロの、
抽象的、且つ、
デザイン性の高いものになりました。
ぱっと見、
ペンデュラムのセカンドみたいな
デザインです。
そういえば、
ペンデュラムの三作目は、
イン・フレイムスとの
コラボ曲ありましたね・・・。
それはさておき、
プロデューサーも、
前作同様に、Daniel Bergstrandです。
メロデス時代は、
彼らのルーツでもある、
北欧民謡をモチーフにした、
ある種、牧歌的なメロディを、
フィーチャーしてきましたが、
今作では、
ほぼそのスタイルではなくなりました。
その代わりに、
ソリッドで短いリフを埋めていくことで、
楽曲のタイトさと、
グルーヴ感を高めています。
しかし、キーボードなど、
SEも効果的に使っているので、
メロディックな雰囲気は残しています。
つまり、
彼らの元々のスタイル(の名残)と、
モダン・ヘヴィネスの、
ミクスチャーのような音楽性になっています。
前作同様に、
相変わらずスネアドラムは、
かなり太い音です。
彼らは、
かつてのメロデス路線でも、
十分に人気者だったと思います。
しかし、メロデス路線はやはり、
カルト路線であるのは間違いないので、
彼らは本作で、より広いフィールドで、
勝負しようと試みたのでしょう。
(つまりは、アメリカでしょうか)
完成度の高い一枚ですが、
時代に近づいた故に、
没個性になったことは、
間違い無いです。
私は、この作品あたりで、
彼らが特別なバンドでは無くなり、
良い曲の多いバンドの一つ、
という存在になりました。
曲単体で見ると、
好きな曲も多いです。
『My Sweet Shadow』あたりは、
非常に格好良いです。
しかし、かつての、
メロデス時代の彼らしか知らない人が、
前情報なしに本作を聴いたら、
まず、同バンドとは気づかないでしょう。
歌を重視したために、
相対的に、ギターリフが弱くなった感があります。
メタルっぽい構成の曲も減らして、
ラジオ向けとでも言えるような、
キャッチーな曲が多いです。
しかし、まだこの時点では、
楽曲のキャッチーさは、
そこまで突き詰められていません。
これまでの素晴らしいギターリフを、
引き換えにして得たものとしては、
正直なところ、かなり物足りないです。
アレンジに関しても、
メロデスどころか、
メタルからも離れそうなものもあり、
『Dead Alone』なんかは、
イントロだけ聴いたら、
ほぼLUNA SEAのような、
V系っぽいアレンジです。
そうかと思えば、
『In Search for I』のように、
旧来のスタイルが残っている曲もあり、
アルバム全体で見て、散漫な印象があります。
他作品と比較して、
これといった曲があまりないために、
やや影の薄い一枚になってしまっています。
『F(r)iend』
『The Quiet Place』
『My Sweet Shadow』
意外にもファン人気高めの一枚!
第2位
手堅い内容で目新しさ少なめ / ☆☆☆
2000年代の一枚目です。
前作を発表してから、
わずか一年しか経っていません。
メンバーは前作と同じです。
私は前作の一曲目、
『Embody the Invisible』を初めて聴いた時は、
ガッツポーズしたものですが、
本作を初めて聴いた時は、
正直、肩透かしを食ったような気持ちでした。
というのも、
彼らが四作目を発表した時のような、
スケールアップした感じが、
ほとんどありませんでした。
それどころか、
以前の勢いが削がれたような印象すらあり、
かなり戸惑いました。
これは、基本的に本作が、
前作の延長線上にあることと、
音質を含めた前作のクオリティが、
すでにかなり高かったため、
前作を聴き込んでいた私には、
新鮮さが感じられなかったからです。
プロデューサーは、
初期から変わらず、
Fredrik Nordströmです。
しかし、今改めて聴き直すと、
この作品でも、
新しいチャレンジをしていることに気づきます。
まず、特筆すべき点は、グルーヴ感の強化です。
『Only for the Weak』は、
テンポを落として、
うねるようなリズムを重視しています。
既述ですが、
私はイン・フレイムスの
2000年のライブに参加しました。
めちゃくちゃ楽しみにしていた割には、
ライブにあまり乗れ切れなかった記憶があります。
というのも、彼らの曲が速すぎたために、
耳で曲を追うことができても、
その曲に身体を合わせにくかったのです。
イン・フレイムスも、
キャリアを重ねるに連れて、
ライブの盛り上がりを見据えて、
曲作りに取り組んだと推測します。
他に、本作で注目すべき点は、
アンダース・フリーデンのクリーンボイスでしょう。
前作までは、
吠えるスタイルのデスボイス一辺倒でした。
本作では、
歌い上げるわけではないですが、
ほぼ完全なクリーンボイスも披露しています。
『Swim』のような、
構成を工夫した楽曲であったり、
『Suburban Me』のような、
従来通りの哀愁漂う曲もあったり、
非常にハイクオリティな作品です。
しかし、全体的には前作と同路線であり、
特に目新しさはありません。
地味ながらも、手堅い一枚といった感じで、
ここに来て、
やや停滞してしまったように、
当時は感じました。
『Only for the Weak』
『Swim』
『Suburban Me』
今こそ再評価されるべき一枚!
第1位
旧来のファンこそ再評価すべき名曲陣 / ☆☆☆☆
2002年に発表された、
通算六枚目の作品です。
前作の『Clayman』の発表から二年と、
大きくインターバルが空いたわけでもないのに、
内容が劇的に変化しています。
まず、
ジャケットデザインが大きく変わりました。
前作までは、
いかにもメタルっぽいデザインで、
バンドイメージが統一されていました。
今作でも、
メタルっぽいおどろおどろしさはあるのですが、
ロゴがかなり洗練れたデザインになり、
なにやらお洒落な雰囲気すらあります。
そして、プロデューサーが、
これまで組んできた、
盟友Fredrik Nordströmから、
Daniel Bergstrandに変更しています。
これの意図するところは、
これまでのメロデススタイルから、
モダン・ヘヴィネスへのシフトでした。
これまでのファンにとっては、
脱メロデス、と言ってしまっても、
過言ではありません。
とにかく、
メロディックなリフを抑えて、
ギターの存在感も控えめにして、
全体のバランスを重視しています。
音質面の変化で特に顕著なのが、
ドラムのスネアです。
かなり緩めに張っているようで、
タムのように太い音になっています。
メタリカのアレを思い出しますが、
アレの発表よりは前ですね。
ボーカルスタイルも変化し、
デスボイスながらも、
メロディを歌い上げる箇所も増えました。
脱メロデスと書きましたが、
メロディ自体は実はかなり残されており、
随所に美メロが挟まれています。
ギターのメインのリフは、
ザクザクした、
ある種デスラッシュっぽくなっていますが、
メロディックなギターフレーズは、
添えるような感じで、
ところどころ散りばめられています。
シンセサイザーの演出も多く、
ボーカルにもエフェクトをかけたり、
まさにモダンヘヴィネスと言える雰囲気です。
時代的には、ヘヴィメタル界が、
旧態依然としたメタルバンドが減り、
細分化が進んだ時代であり、
イン・フレイムスも、
時代に則したアレンジを取り込んだと言えます。
個人的には、本作を聴いて、
かなり衝撃を受けました。
正直なところ、
当時は気持ちが大きく離れました。
前作の『Clayman』で、
かなり熱が落ちてきてしまって、
本作では完全に熱が冷めました。
しかし、
時間が経ってから改めて聴くと、
楽曲の充実度が高いことに気づきます。
彼らがこれまでのスタイルを捨ててまで、
チャレンジした作品として見ると、
相当なクオリティです。
この点は、好き嫌いとは別として、
本来高く評価されるべきでしょう。
(私の印象では、本作は、
私のような旧来のファンから、
かなり叩かれた記憶があります)
惜しむらくは、
イン・フレイムスが、
それまでなし得たものが大きかったが故に、
この作品単独として、
正当な評価を得ることが、
当時は難しかったことです。
楽曲を見ると、冒頭四曲は、
まさに説明したような、
モダン・ヘヴィネス調の新路線の曲で、
気合が入っています。
しかし、聴き込んでいくと、
このアルバムには、
それ以外にも面白い曲が沢山あります。
これまでの北欧朝のメロディに、
クリーンボイスで歌うバラードの『Metaphor』は、
素晴らしい出来です。
この曲は、メロデスよりは、
ゴシックメタルっぽいかもしれません。
『Cloud Connected』や『Free Fall』など、
SEをふんだんに使っており、
完全に歌物路線と言えます。
その一方、アルバム後半にある、
『Dismiss the Cynics』
『Dark Signs』
このあたりの曲は、
前作にあってもそれほど違和感ないような、
彼らの旧来のスタイルを保っています。
アルバム全体を見たときに、
前半には新路線の曲を並べ、
後半には、
これまでの延長線上にある曲も配置しています。
また、
所々実験的な曲を挟んでいます。
この構成が、
この作品のハードルを上げているのは、
間違いないと言えます。
しかし、
聴けば聴くほど味が出る、
いわゆるスルメ的なアルバムであり、
ここで一回離れたリスナーも、
今一度チャレンジしてみる価値は、
十分にあると思います。
但し、14曲という曲数は、
さすがに多すぎます。
もう少し曲を絞り込んでいれば、
当時としても、
印象はかなり違ったのではないでしょうか。
『Trigger』
『Dark Signs』
『Metaphor』
終わりに
今回レビュー用に、
2000年代のイン・フレイムス作品を、
集中的に聴きましたが、
当時聴いた印象と、かなり違いました。
特に『Reroute to Remain』は、
改めて素晴らしさを感じた次第です。
ランキング上、
『Reroute to Remain』を、
『Clayman』の上にしましたが、
私の中で、点数はほぼ同点です。
但し、
『Reroute to Remain』は、
大きく路線変更し、
チャレンジしているにも関わらず、
高いクオリティを維持しており、
そのあたりを評価しました。
古いファンは、
『Reroute to Remain』あたりで、
イン・フレイムスから離れた人が多いはずなので、
このレビューが、
もう一度聴き直すきっかけになれば幸いです。
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