トトオです。
今回は、97年のブルース・ディッキンソンのソロ作、『アクシデント・オブ・バース』をレビューします。
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ブレイズに吹く逆風とブルース
ベスト盤のお手本『Best of the Beast』
90年代中盤、高校生でメタラーに成り立ての私は、メイデンに鬼ハマりしていました。
メイデンは、ブレイズ・ベイリー加入第一弾の『The X Factor』を発表した後に、バンド初のベストアルバム『Best of the Beast』を発表したばかりでした。
このベストの出来は、本当に素晴らしいものでした。
選曲ももちろん良いのですが、凝ったライナーノーツや、バンドのファミリーツリーなど、バンドに対する愛情あふれる作りとなっています。
(ちなみに私が買ったのは、国内盤で二枚組)
ブレイズとブルース(とポール)
このベストを聴いて、確認できたことがいくつかありました。
今は三代目のブレイズがシンガー
前任のブルースが大半の人気曲を歌う
一番長く歌っていたブルース・ディッキンソンが、今はいないようです。
ブレイズの圧倒的な低評価
当時のメタル専門誌では、ブレイズに対する風当たりは大変厳しいものがありました。
私はベストから入ったこともあり、
「こいつらブレイズに何か恨みでもあるんか?」
と、不思議に思うほどでした。
(今なら理由はわかる)
しかし、メイデンの人気は、ブレイズ加入後は明らかに落ち目でした。
そんな中、前任のブルースが新作を発表することを知りました。
『Accident of Birth』(1997年発表)
概要
97年に発表された、ブルースの四作目のソロアルバムです。
メンバー
ブルースのソロ作ですが、本作のポイントはそのメンバーです。
二作目の『Balls to Picasso』と同様に、トライブ・オブ・ジプシーズ及びロイ・Zが全面的に参加しています。
そして、メイデン時代の盟友、エイドリアン・スミスが加わっています。
ブルースとエイドリアンは、メイデン時代に共作した楽曲多数で、相性抜群です。
ちなみに、この時期のブルースは、長髪をばっさり切り落としています。前作『Skunkworks』の時は、やや中途半端だったので、こっちの方が格好良いです。
ジャケット
このジャケットどう思います?
気色悪いことこの上ないですよね。
これ、イラストがアップになって、全体が見えないからまだマシなんです。引きで見た絵はもっとひどいです。
北米版はこのピエロが正面を向いているという、誰も喜ばない謎仕様です。
(ちなみに、リマスター盤はちょっとポップになりました)
楽曲
魂の歌唱『Man of Sorrows』
復活!エイドリアンとの名コンビ
売れる「ソロ作」へ軌道修正
本作は発表された時期もあり、正統派なメタルをベースとしながらも、グルーヴやヘヴィネスを取り入れた意欲作になっています。
アルバム前半、特にその色は顕著ですが、次作はさらにこの方向性を強めます。
また、ロイ・Zの影響か、独特のスケールを使ったフレーズもあり、70年代プログレ風の雰囲気も漂います。
表題曲の映像です(珍しい)。この曲はかなりメイデンっぽいです。
本作はブルースのソロキャリア中、最もメイデンに近い作品です。
しかし、正統派なメタルを軸としながらも、色々な要素が混在しているあたりは、ソロで自分がやりたい路線と、実需がある路線の落としどころを探った、という気がします。
魂の歌唱『Man of Sorrows』
本作で一曲選ぶなら、間違いなくこの『Man of Sorrows』です。
メイデン時代では作り得なかった、ストレートなピアノバラードです。
ブルースは当時38歳で、脂が乗り切っています。彼の実力を完全に発揮した、素晴らしい楽曲です。
歌メロの素晴らしさもさることながら、アレンジも凝っていて、ギターソロも文句なしです。
メイデンにいる限りは、どうしても「メイデンらしい」曲を歌わざるを得ません。
ソロだからこそこの楽曲が生まれたという意味では、やはりソロ活動の価値はあったと言えます。
復活!エイドリアンとの名コンビ
本アルバムで、ブルースとエイドリアンとの共作は二曲です。
Welcome to the Pit
『Welcome to the Pit』は、スローヘヴィながら、ギターはメロディックな佳曲です。
注目は『Road to Hell』で、当時、メイデン本家よりメイデンらしいと言われた楽曲です。
これを聴いた時に、大半のメイデンファンは複雑な思いをしたはずです。
メイデンのメンバーが演奏していないだけで、ほぼメイデンと言える楽曲です。
結果的に、この数年後に二人セットでメイデンに復帰しますが、この楽曲はその布石だったのかもしれません。
オススメ名曲ランキング
1位『Man of Sorrows』
2位『Road to Hell』
3位『Darkside of Aquarius』
終わりに
この作品を聴くたび、メイデンとジューダス・プリーストが同じような道を辿ったことが思い浮かびます。
プリーストも90年代にロブが抜けて、バンドもロブも苦戦しました。
その後、ロイ・Zがロブを復活させて、最終的にロブがバンドに戻りました。
一つのジャンルで大成したとしても、表現者としての自分の道を追求したくなるのが、才能に恵まれた人間の性かもしれません。
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